パンを美味しく作るためには「発酵」のコントロールは欠かせません。
どんなに良い材料を使っても、どんなに良いオーブンを用意しても、適切な発酵が取れていなければパンは美味しく焼き上がりません。ですから発酵状態を見極めることが美味しいパン作りには欠かせないんですね。
では適切な発酵状態を過ぎ、過発酵してしまうとなぜ美味しくないのでしょうか。
今回はパンは過発酵するとどうなるのか、そしてパンが過発酵してしまった場合に対処法はあるのかを説明していきます。
過発酵したパン生地の中ではこんなことが起こっています
パンが発酵するのはパン生地の中のイースト菌(発酵種)が活動しているからですよね。過発酵させてしまうということは、イースト菌(発酵種)が働きすぎてしまっている状態ということです。
イースト菌は活動することで炭酸ガスを発生します。これによってパンは膨らむのですが、過発酵したパン生地は炭酸ガスを抱え過ぎているのでブクブクに膨らみ、更に過発酵してしまうと炭酸ガスを抱えきれずにしぼんでしまいます。
また、イースト菌は炭酸ガス以外にもアルコールや酸を作り出します。適切な発酵ならばアルコールはパンに独特の風味をつけ、生地を伸びやすくしますし、酸はパン生地に適度な張りを持たせます。
しかし過発酵によりパン生地中のアルコールが増えすぎてしまうと臭み(発酵臭)が強くなり生地がダレるようになり、酸が増えすぎると味が酸っぱくなったり生地がブリブリに張り過ぎるようになります。
この状態では残念ながら美味しいパンは焼き上がりません。
過発酵したパン生地の対処法は?
過発酵したパン生地の対処法ですが、残念ながら過発酵したパン生地を美味しいパンにする方法はありません。
ダレもしくは張り過ぎといった生地状態だけで言えば適正に近い状態に持っていくことは出来ます。生地をまるめ直してガスを抜き、生地を休ませればある程度扱える状態にすることは出来るでしょう。
しかし生地中のアルコールや酸の量を元に戻すことは出来ません。発酵臭の強い生地の臭みを抜くことは出来ませんし、酸っぱい生地の酸味を抜くことは出来ません。
では捨てるしかないのかというとそうではありません。
確かに過発酵してしまったパン生地をそのままパンにしても美味しくないのですが、過発酵してしまった生地の一部を冷蔵保存し、次にパンを作る時に混ぜ込むことでパン生地を再生利用することができます。
こういった製法のことを老麺法もしくはパート・フェルメント法と呼びます。
注意点は混ぜ込む生地は多くても完成量の10%までということと、過発酵の程度によっては使えないということです。
完成量の10%とはどういう事かというと、出来上がりのパン生地量が1,000gだとしたら、多くても過発酵した生地を混ぜ込めるのは100gという意味です。これを超えると臭みや酸味が強く感じられるようになってしまいます。
また、明らかに発酵臭が強すぎる生地や酸味が強すぎる生地は味に影響が出るので使わない方が良いでしょう。
この製法で過発酵したパン生地を使うのであれば、混ぜ込む生地は必ず冷蔵保存して今以上に過発酵にならないように注意して下さい。また、冷蔵保存しても発酵が完全に止まるわけではないので2~3日以内に使うことをおすすめします。