パンを低温で発酵させるとどうなるの?低温発酵でパン作りをする際の注意点とは

どうも、パン職人Kenです。

パンの発酵温度と言えば一次発酵(フロアタイム)および二次発酵(ベンチタイム)でおよそ28℃最終発酵で30℃~38℃(パンの種類による)が一般的です。

では発酵温度をもっと下げて低温で発酵させると一体どうなると思いますか?

実はこれ、プロの現場でも使われる製法なんですが、低温でパンを発酵させることで色んなメリットがあるんです。

もちろん注意点もあるので気を付けて欲しいのですが、上手く低温発酵を使いこなせるようになると非常に便利なのでぜひ覚えておいて欲しいと思います。

 

パンを低温で発酵させるとどうなるの?

パンはイースト菌や天然酵母などの「生き物」の力によって生地を膨らませます。

これらの発酵種が生き物である以上、どれだけパンを上手く膨らませてくれるかは発酵温度次第なんですね。

普通の製法ならパン生地を冷やすのはNGなんです。パン生地を工程の途中で冷やしてしまうと発酵が鈍り、上手に焼き上がらなくなってしまうからです。

パンは工程の途中で冷やすと上手く膨らみません

それならパンを低温で発酵させるのもNGなんじゃない?と思うかもしれませんが、最初に書いたように上手にやればメリットがたくさんあるんです!

パンを低温で発酵させると何が起きるかと言うと、「発酵」が抑えられ、代わりに「熟成」が進むようになるんです。

  1. 発酵が抑えられる
  2. 熟成が進む

この2点が非常に重要なんです。

 

パンの「発酵」と「熟成」って何が違うの?

発酵と熟成の違いってなんとなく分かるようで分かりにくいと思います。

実はこの発酵と熟成、パン生地の中では全然違うことが起こっているんですよ!

発酵は簡単に言えば発酵種の力でパン生地が膨らむことです。

イースト菌などの発酵種は温かい温度の時は菌の数をどんどんと増やし、炭酸ガスを作り出し続けます。

この炭酸ガスの力でパンは膨らんでいくんですね。

では熟成とは何かというと、発酵種が小麦粉や砂糖を分解し、旨味成分や香りの元になる成分を作り出すことです。

しっかり熟成させたパンは旨味が強く、パン独特の香りもしっかりとしています。反対に熟成をほとんどさせずに作ったパンは味も香りも薄いんですね。

パン作りの製法の中に速成法と呼ばれるものがあります。

これは生地を高い温度で捏ね上げ、高い温度で発酵をとって短時間で焼き上げる製法です。

この製法だと短時間でパンを作ることができますが、熟成をほとんどとらないので何とも素っ気ない味になってしまうんですね。

それだけ熟成がパンの味に与える影響は大きいんです。

 

パンを低温で発酵させるメリット

パンを低温で発酵させると「発酵」が抑えられ、代わりに「熟成」が進むようになると説明しましたが、それによってどんなメリットがあるのでしょうか?

パンの発酵が抑えられ、代わりに熟成が進むことで2つのメリットがあります。それは

  1. 工程を自由にコントロールできる
  2. 味や風味が良くなる

この2つです。

 

1.工程を自由にコントロールできる

普通パン作りはスタートしたら途中で止めることが出来ません。

工程の途中で一旦生地を低い温度で置くことで多少発酵を遅らせる程度のことはできますが、やり過ぎると発酵が鈍くなってしまいます。

「生地をこね始めてから焼き上げるまでつきっきりで作業出来ない!途中で子どものお迎えもあるし、買い物にも行きたいし…今日はパン作り無理かな…」

そんな時はパンを最初の段階で低温発酵させることで工程を自由にコントロールすることができるようになります。

ここで言う低温発酵とは一次発酵(フロアタイム)を低温で行うということです。

例えばコッペパン生地の場合、普段27℃で生地をこね上げるところを24℃でこね上げ、20分程28℃で一次発酵をとった後に冷蔵庫に入れてしまいます。

冷蔵庫に入れることで発酵は鈍くなりますが、その代わりに長時間発酵を取ることができるようになります。

まとめるとこんな感じ。

そうすると前日にパン生地をこねておいて、パン作りをしたい時に前もって生地を冷蔵庫から出しておけば生地を分割するところから始めることができまず!

生地の仕込みと一次発酵を前日に済ますことができるわけですね。

上の表の一次発酵のところに「冷蔵庫で12~18時間」と書いてありますが、これがどういう意味かというと最短で12時間、長くても18時間は冷蔵庫で寝かしておくことができるという意味です。

幅があるのでスケジュールもたてやすいですよね。

これでかなりパン作りの工程をコントロールしやすくなるはずです。

 

2.味や風味が良くなる

これは先ほども説明した通りですが、パン生地を低温で発酵させることで熟成が進むようになります。

パン生地を熟成させることで発酵種が小麦粉や砂糖を分解し、アミノ酸などの旨味成分をたくさん作り出してくれます。

低温発酵とか冷蔵発酵、長時間発酵などを売りにしたパンを食べてパンよりも旨味を感じた経験ってありませんか?

特にフランスパンなどのシンプルなパンを食べると分かりやすいんですが、ストレート法で作ったパンと低温発酵で熟成を進めたパンでは全然味が違います。

ただ、今回は「味や風味が良くなる」と書きましたが味覚は人それぞれなので、ストレート法でつくったシンプルな味わいのパンの方が好きという方もいるでしょうし、どちらが良いという訳ではありません。

ですが低温発酵で作ったパンの方が旨味や風味、香りは強くなります。

 

パンを低温発酵で作る際の注意点

ここまで説明してきた低温発酵ですが、実際にパンを低温発酵で作る際には注意点が3つあります。それは、

  1. 復温はきっちりと行う
  2. 乾燥に要注意
  3. 寝かしておける時間は配合によって異なる

この3点です。

 

1.復温はきっちりと行う

復温という言葉は聞きなれないと思いますが、復温をきっちりと行うというはどういう意味かというと冷蔵庫で寝かした生地を分割する際にはきっちりと温度を上げてから行うということです。

パン生地が冷たいまま工程を進めてはいけないということですね。

パン生地が冷えたままその後の工程を進めてもうまく発酵してくれません。ですから前もって冷蔵庫から出しておいて生地の温度が上がるのを待つ必要があるんですね。

復温の目安は15℃前後です。これはきっちりと守りましょう。

 

2.乾燥に要注意

パンにとって乾燥は大敵です。

パン生地が乾燥してしまうとその部分はうまく発酵せず、美味しいパンになりません。

ですからパン生地を冷蔵庫で寝かす際にはパン生地が乾燥しないように十分注意しましょう。

具体的には生地を入れたボウル(バット)ごとビニール袋に入れて空気と触れないようにしておくのが良いと思います。

ただし、生地をこね上げた直後にビニール袋に入れてしまうと生地が上手く冷えずに発酵過多になってしまう恐れがあります。

一度ビニール袋に入れずに冷蔵庫に30分程いれて生地を冷やし、乾燥する前にビニール袋に入れて再び冷やすのが良いと思います。

 

3.寝かしておける時間は配合によって異なる

先ほどコッペパン生地の場合を例にストレート法と低温発酵の違いを表にまとめました。

ただこれはどんなレシピでもOKなわけではなく、レシピ(配合)によって変わってきます。

イーストの量や種類、砂糖の量や油脂の量など、レシピによって多少変わってきますので要注意です。

このあたりの注意点を理解して低温発酵を活用すればパン作りはもっと美味しく、もっと便利にできるようになるのでぜひ一度チャレンジしてみて下さいね!