サワー種(サワードゥ)について簡単に説明します

どうも、パン職人のけんです。

今回は、サワー種を使ったパン作りの肝となる、「サワー種」そのものについて簡単に説明しようと思います。

細かく詳しく知ろうとすると生物学になっちゃうので、ざっくりと簡単な説明にとどめようと思います。

そこまで詳しく知らなくても、パン作りをする上では問題ありませんからね!

サワー種って何?

サワー種は、パン生地を膨らませる働きを持った「発酵種」の一つです。

パン作りに使う発酵種で最も有名なのは製パン用酵母(イースト)だと思います。パン作りに興味が無くても聞いたことありますよね?

サワー種は小麦やライ麦の全粒粉を使って起こす発酵種で、主に乳酸菌と酵母が含まれています。

小麦やライ麦の表面には自然に存在する乳酸菌や酵母がくっついています。

この酵母や乳酸菌をうまいこと培養し、数を増やしてあげるとパンを膨らませるに足るだけの炭酸ガスを作り出すことができるようになります。

サワー種ってどうやって作るの?

サワー種の作り方は簡単で、全粒粉と水を混ぜておいておくだけです。

もう少し詳しく説明すると、清潔な容器に全粒粉と水を1:1で入れて混ぜ、できるだけ温かい所(28℃前後)で24時間おいておきます。

最初は何の変化もありませんが、24時間経つ頃にはうっすらと気泡が出てくるはずです。

これに再び全粒粉と水を加えて混ぜ、およそ2倍の大きさに膨らむまで置いておきます。

これを4~5回繰り返せば、サワー種が完成します。

最初のうちは全然気泡が出なかったり、やや腐ったようなにおいがします。

しかし、うまくサワー種が作れていれば、粉と水を混ぜる工程を繰り返すうちに嫌なにおいはなくなり、活発に気泡を出し、フルーティな香りや酸っぱいにおいを感じるようになります。こうなれば、サワー種の完成です。

サワー種とイーストは何が違うの?

サワー種は小麦やライ麦の表面にくっついている微生物(乳酸菌や酵母)を培養し、パン作りに使えるようにしたものです。

では、パン作りに使われている製パン用酵母(イースト)とは何が違うのでしょうか。

イーストというのは、自然に存在する酵母の中から、パン作りに適したものを選抜し、培養した発酵種です。

選抜されているだけあって、パン作りにはとても適しています。特に発酵速度が段違いに速いです。

そして工業的に一定の品質で作られているため、パンを大量生産するにはもってこいです。品質にムラが無いって、とても大事。

サワー種の良いところ(悪いところ)

サワー種についてざっくりと説明してきましたが、最後にサワー種の良いところ(悪いところ)を紹介したいと思います。ちなみに、これは私の主観ですのでそのつもりで。

サワー種の良いところ

私が思うサワー種の良いところは、

  1. 風味が複雑で香りがいい
  2. ほのかな酸味がある
  3. サワー種を育てる楽しさがある
  4. 昔のパン作りを体験できる

この4つです。

1.風味が複雑で香りがいい

サワー種で作ったパンはイーストで作ったパンにはない複雑な風味と香りがあります。

これはサワー種が単一の酵母からなっているわけではなく、乳酸菌と酵母が混ざりあってできているからです。

更に言うと、おうちで作るサワー種は工場のような一定の環境(特に温度)で作られたものではないので、その時その時で微妙に状態に変化があります。

再現性が無いというか、一期一会というか。そんな感じですね。こういったことが、サワー種で作ったパンに複雑な風味と香りを持たせてくれます。

2.ほのかな酸味がある

風味と少し被る部分ですが、サワー種でパンを作ると、パンにほのかな酸味を持たせることができます。

これはサワー種が熟成する間に、乳酸菌が乳酸とわずかに酢酸を作り出すからです。

これは好みにもよりますが、ほのかな酸味はパンのおいしさを引き出してくれると私は思います。

「サワー」という響きから、サワー種を使ったパンはすごく酸っぱいというイメージを持っている方もいるかもしれません。

実際はそんなことはなく、酸味は作り方である程度コントロールすることができます。

3.サワー種を育てる楽しさがある

サワー種は自分で種を起こさないといけません。

上手に種を起こせても、それをずっと使い続けるには定期的(最低でも一週間に一回)に種継ぎをしなければいけません。

イーストなら買ってくればすぐに使えます。インスタントドライイーストなら長期保存もできます。

そう考えると、サワー種を管理するのは手間がかかります。ですが、それは見方を変えると、自分でサワー種を育てる楽しさがあるということです。

サワー種を作り始めてすぐのころはうまく気泡が出なくて、心配すると思います。

ですが、気をかけて様子を見守っていたサワー種が活発に気泡を出し、フルーティな香りがし始めると、ほっとした気持ちとともにうまくできた喜びを感じます。

サワー種作りに慣れてくると、それまで以上にサワー種に対して興味が出てくると思います。

小麦全粒粉で起こすとどうなるのか。ライ麦全粒粉ではどうなのか。どのタイミングで種を継ぐといいのか。温度は?元の種の量は?水の量は?

こういったことを考えながら試行錯誤してサワー種を育てるのはとても楽しく感じます。

そして、手間暇かけて育てたサワー種を使ってパンが上手に焼けると、とても嬉しいです。最高!

4.昔のパン作りを体験できる

サワー種を使ったパンが焼けると、私はいつも「昔の人はこうやってパンを焼いていたんだなぁ」としみじみ思います。

今ならイーストは簡単に手に入りますが、製品としての製パン用イーストが開発され、普及するまではサワー種やビール酵母でパン作りがされていました。

私はサラリーマンパン職人なので、普段はパン工場でパンを作っています。そこではイーストを使い、日々大量のパンを作っています。

サワー種を使った昔ながらのパン作りと、イーストを使ったパン作り。この両方を知っている身としては、手間暇かかるサワー種を使い、パンが焼けたときはなかなか感慨深いんですよね。

イーストが簡単に手に入る現代、あえてサワー種を使って手間暇かけてのんびりとパンを焼く。これって、なかなかいい趣味なんじゃないかなと思うんですけど、どうでしょうか。

サワー種の悪いところ

サワー種の悪いところは、良いところの裏返しです。つまり、

  • 風味や香りが不安定になる可能性がある
  • パンに酸味が出てしまう可能性がある
  • 手間暇かけてサワー種を管理する必要がある
  • 時間がかかる

この4つです。

サワー種は作った環境や管理する環境により、状態が変わります。つまり、風味や香り、発酵力が不安定になる可能性があります。

失敗せずに確実にパン作りを成功させたいときは、イーストを使った方が無難です。

サワー種の状態によっては、強い酸味が出てしまうことがあります。また、酸味が苦手でほのかな酸味でもない方が良い場合はイーストを使った方が良いでしょう。

パン作りを手軽に楽しみたい場合はイーストを使った方が便利です。

イーストは買ってきたらすぐに使えます。インスタントドライイーストは長期保存も可能です。種継ぎの手間もありません。

昔の人はサワー種を使い、時間と手間暇をかけてパンを焼いていたんだと思います。

私はのんびりとしたパン作りを楽しむのは好きですが、それでもイーストを使ってパンを作った時の発酵力の高さには安心します。つまり、イーストは発酵が速いんです。

時間の問題は工夫によって解消できるものもありますが、時短するならイーストを使った方が良いと思います。

最後に

さて、今回はサワー種についてざっくりと簡単に説明してきましたが、サワー種のことをなんとなく分かっていただけたでしょうか。

分かりやすくするために、多くの部分でイーストとの比較でサワー種を説明しましたが、ちょっと誤解のないようにしていただきたいことがあります。

パンに興味関心のある方の中には、イーストと天然酵母(サワー種)を「どちらの方が良い、優れている、おいしい」という文脈で語る方がいるようで。

これに関しては、私は「みんな違って、みんな良い」的な立場です。

イーストとその他の発酵種はそれぞれ違ったもので、違った特徴があり、違ったおいしさがあります。

上手に作ったパンは、どの発酵種を使おうが、それぞれおいしいんですよ~ということですね。

ここはぜひ知っておいていただきたいなぁと思いました。

というわけでざっくりサワー種解説でした。それではまた。