パン職人がおうちで焼くフランスパン【ストレート法(一次発酵3時間)】

どうも、パン職人のけんです。今回はおうちでフランスパンを焼いてみました。

フランスパンには様々な製法がありますが、今回は最もスタンダードな製法であるストレート法で作りました。

ストレート法:パン生地をこね始めてから最後にパンが焼き上がるまで、ノンストップで進める製法。

ストレート法の場合、一次発酵の時間をどれくらいとるかによって、香りや味わいが大きく変わってきます。

スタンダードなストレート法だと、一次発酵は3時間とる場合が多いので、今回は一次発酵を3時間とって作ってみました。

なお、今回のフランスパン作りは動画でも紹介しています。

動画では長さの都合上、詳細な説明を省いている部分もあり、こちらの記事の方が詳細に説明していますが、動画の方が分かりやすい部分もあると思うのでよろしければ併せてご覧ください。

それでは作り方を紹介していきますね!

フランスパンのレシピ(材料)

まずはフランスパン作りに必要な材料・レシピを紹介します。

【レシピ(約25cmのフランスパン2本分)】

  • 中力粉:240g
  • 強力粉:60g
  • インスタントドライイースト:0.9g
  • 塩:6g
  • モルトシロップ:0.9g
  • 水:204g

小麦粉

フランスパン作りには、中力粉や準強力粉、フランスパン用粉と呼ばれる小麦粉を使います。

パン作り用の小麦粉と言えば強力粉を思い浮かべるかもしれませんが、フランスパンには強力粉は適しません。

強力粉100%でフランスパンを作ってしまうと、ボリュームは出ますがふわふわスカスカのフランスパンになってしまいます。

今回のレシピでは中力粉をメインにして、強力粉を少し(小麦粉全体の20%)ブレンドしています。

この理由は、私が普段使っている中力粉があまりパン作りに適したものではなく、吸水性も悪いからです。

この中力粉100%でフランスパンを作ると、ボリュームが控えめでかなり硬めにのパンになってしまうため、強力粉を混ぜて吸水性を少し高め、ボリューム不足対策をしています。

ちなみに普段使っている中力粉は業務スーパーオリジナルのものです。パン作り用ではありませんが、お安くてコスパ良好なのでよく使っています。

フランスパン用粉でメジャーなのは、日清製粉の「リスドォル」という小麦粉です。これは、分類的には準強力粉になります。

プロのパン職人も使う小麦粉なので、材料にこだわりたい方にはおすすめです。

小麦粉を変えると、水の量も変わる可能性があるので要注意です。

インスタントドライイースト

イーストには顆粒状の(インスタント)ドライイーストと、しっとりとした生イーストがありますが、おうちでパンを焼く場合はインスタントドライイーストが便利です。

生イーストには生イーストの良さがありますが、手に入れづらく価格が割高で、更に期限が短いため、おうちでのパン作りでは扱いづらいと思います。

インスタントドライイーストはスーパーで売っているものを使ってもいいですが、今回使っているのは「サフインスタントドライイースト赤」という、プロのパン職人も使うイーストです。

こちらは小分けタイプもあるので、頻繁にパン作りをしない人にもおすすめです。

塩はおうちにある塩を使ってもらえればOKです。

こだわりたい方は、フランスパン作りなのでフランス産のゲランドの塩はいかがでしょうか。私も以前使っていたことがありますが、美味しい塩です。

モルトシロップ

モルトシロップはあまり聞きなれない材料かもしれませんが、フランスパンなどのシンプルな配合のパン作りではよく使います。

モルトシロップは麦芽から作られたシロップで、酵素がたくさん含まれています。

この酵素の働きにより、イーストの働きが促進される、パンの焼き色が良くなる、生地が伸びやすくなるといった効果を得られます。

かなり専門的な食材なので、お持ちでなければ入れなくても作れますが、上記のような効果が得られなくなるため、焼き上がったフランスパンにも影響があります。

モルトにはシロップとパウダーがありますが、パウダーはシロップと比べて使用量が少なく、計量しづらい(今回のレシピだとシロップなら0.9g、パウダーだと0.1g程度)ため私はモルトシロップを使っています。

水は水道水でも十分ですが、こだわりのある方はミネラルウォーターを使ってもいいでしょう。

ただ、硬水はパン生地を引き締める効果があるため、入れすぎには注意が必要です。コントレックスなどの超硬水を使う場合は、水全体の20%程度にしておきましょう。

フランスパンの作り方(工程)

フランスパンのレシピ・材料を確認したら、さっそく作り方を見ていきましょう。

フランスパンは以下の工程で作ります。

  1. 生地仕込み
  2. 一次発酵
  3. パンチ
  4. 一次発酵(続き)
  5. 分割・まるめ
  6. ベンチタイム
  7. 成形
  8. 二次発酵
  9. 仕上げ
  10. 焼成

生地仕込み

まずはフランスパンの生地を仕込みます。

今回は小麦粉300gなので、この程度の量なら手ごねでもOKですし、ホームベーカリーのこね機能を使ってももちろんOKです。

ボウルにイースト、塩を除くすべての材料を入れ、こねていきます。水はぬるま湯(夏場は冷水)を使います。

この段階ではガッツリこねる必要はありません。粉っぽさがなくなればOKです。

その後、この生地にインスタントドライイーストを振りかけ、20分ほど待ちます。

この工程をオートリーズと呼びます。オートリーズをすることで小麦粉が水を吸い、グルテンの生成が促され、伸びの良い生地になります。

20分経ったら生地をこね、インスタントドライイーストが混ざったら塩を入れ、再びこねます。

生地が滑らかになるまでこねれば生地の仕込みは完了です。

この時に生地の温度が24℃になればベストです。

この後の工程で説明する発酵時間は、生地温度が24℃だった場合の目安の時間になります。

生地温度が低ければ発酵時間は長く、反対に高ければ発酵時間は短くなるので注意が必要です。

生地ができ上った時の生地温度(こね上げ温度)はパンの焼き上がりに大きく関わるので、できるだけ目標こねあげ温度(今回は24℃)に近づけたいところです。

とはいえ、いきなりぴったりにするのは難しいですよね。

こね上げ温度は水の温度で調整できるため、水の温度とこね上げ温度を記録しておくことをおすすめします。

そうすることで次回のパン作りに活かせるので、狙った温度で生地を仕込むことができるようになりますよ!

一次発酵

生地ができたら、生地を発酵・熟成させる時間をとります。これが一次発酵です。

一次発酵は合計3時間とりますが、まずは90分間一次発酵をとります。

一次発酵はできるだけ30℃に近い環境でとれるとベストです。

お使いのオーブンに発酵機能があれば、それを使うのが便利だと思います。無い場合は、できるだけ30℃に近づける工夫が必要になります。

夏場はあまり苦労しないと思いますが、それ以外はできるだけ温かい場所を探して、そこで一次発酵をとりましょう。

また、生地が乾燥しないようにラップをかけたり、濡れふきんを被せるなどの乾燥対策を忘れずに!

パンチ~一次発酵(続き)

90分経つと生地が緩み、発酵が進んで一回り大きくなります。

生地を作業台に出し、パンチという作業を行います。

パンチは生地のガスを抜き、折りたたむ作業です。この作業をすることで生地に新しい空気が取り込まれ、イーストの発酵が促されます。また、生地に力が付き、ボリュームが出るようになります。

作業としては、生地のガスを抜いて四角く整え、左右から生地を重ねて三段重ねにします。その後、再び生地を重ねて三段重ねにすればパンチ完了です。

言葉ではなかなか説明しづらいので、動画を見ていただくのが分かりやすいと思います。

パンチが終わったら、再び一次発酵の続きを90分とります。先ほど同様、できるだけ30℃に近い場所で、乾燥対策も忘れずにしましょう。

これで、一次発酵が合計3時になります。

分割・まるめ~ベンチタイム

一次発酵が終わると、生地は膨らみ、プリッと張りのある状態になります。

今回の生地はフランスパン2本分なので、生地を二等分していきます。

生地を作業台に出し、デジタルスケールを使って二等分します。目分量で二等分してもいいですが、あまりに大きさが違うと後で焼いた時に焼きムラができるので、スケールを使うことをおすすめします。

分割する時の注意点は、できるだけ細切れの生地を作らないことです。

多少の細切れは問題ないのですが、たくさんできてしまうとその部分がうまく膨らまなくなってしまうので注意してくださいね。

生地を分割したらまるめます。

大きなガスを抜き、生地の断面や細切れを隠すように生地の中に入れ込み、折りたたんで閉じ目を閉じ、表面を張らせます。

フランスパンは細長く成形するので、まるめの段階で楕円形にしておくと成形がしやすくなりますよ。

まるめが終わったら、次の成型に備えて生地を休ませる時間(ベンチタイム)をとります。

乾燥対策をして、30分間生地を休ませましょう。

成形~二次発酵

生地が休んだら、成形していきます。

フランスパンの成型は、まず手のひら全体を使って大きなガスを抜き、上下の生地を中心に向かって折りたたみます。

そうすると生地の上下が張るので、その状態で二つ折りにして閉じ目を閉じ、生地を転がしながら張らせ、好みの長さにすれば成形完了です。

こちらも動画を見ていただくのが分かりやすいと思います。

成形時のポイントは、生地を傷めないことです。

フランスパンの生地はデリケートで、生地を傷めてしまうと上手く膨らんでくれません。

成形の最初に生地のガスを抜くときは、手のひら全体を使いましょう。指先で生地をつぶしてしまうとその部分は膨らみにくくなってしまします。

また、最後に生地の長さを調整する時は、部分的に細くならないように(くびれができないように)注意します。

細くなってしまったところは生地が締まりすぎてしまい、うまく膨らみません。

成形が終わったら、キャンバス地のパンマットに乗せて二次発酵を約40分とります。二次発酵もできるだけ30℃に近い温度でできるとベストです。乾燥対策も忘れずに!

キャンバス地のパンマットはパン生地がくっつきにくく、適度に水分を吸い取ってくれるのでフランスパンなどのハード系のパン作りでよく使われます。

パンマットを折ってひだを作ると、その部分が壁になってパンを支えてくれるため、生地が横にダレずにボリュームが出やすくなるのでおすすめです。

パンマットをお持ちでない場合は、ベーキングシートに乗せて二次発酵をとってください。

仕上げ

二次発酵が終わると、生地はこれくらい膨らみます。

この後は焼く前に、仕上げをします。何をするかというと、パンの表面にカットを入れます。

カットを入れることで、パンの表面にフランスパン特有の模様ができます。ただ、カットは見た目のためだけに入れるんじゃないんですよ。

カットしたところは、パンを焼いた時の蒸気の逃げ道になります。この逃げ道を作っておくことで、火通りが良くなって中心までしっかり焼けるのと、蒸気が逃げる際にパン生地を押し広げ、パンにボリュームがでます。

まずカットを入れる前に、パン生地をパンマットからベーキングシートに移します。

移す際には取り板を使います。パン職人は薄い板にストッキングを被せたものをよく使いますが、今回は牛乳パックを重ねて板状にしたものを使っています。

パンマットを持ち上げてパン生地を転がしながら取り板の上に乗せ、ベーキングシートに転がして移し替えればOKです。

移し替えたら取り板と手のひらを使って、形をまっすぐにやさしく整えます。

二次発酵が済んだ生地はとてもデリケートで、衝撃を与えるとしぼんでします。生地を移し替えたり整えたりする作業は慎重にやりましょう。

この後は生地にカットを入れます。カットの本数は好みですが、今回の長さ(約25cm)だと1~2本がいいと思います。

プロのパン職人はカットを入れるのにクープナイフという道具を使います。

棒の部分とカミソリ刃の部分に分かれているのですが、カミソリ刃を湾曲させてセットするようになっていて、これを使うとパン生地の表面を薄くそぐように、きれいなカットを入れることができます。

これがあると便利ですが、小型のナイフや片刃のカミソリ(よくあるピンクの柄のやつ)でも代用できますよ。

今回は片刃のカミソリを使っていますが、これやナイフでカットを入れる場合は、生地に対して直角に刃を入れるのではなく、カミソリ(ナイフ)を手前に倒して斜めに刃が入るようにします。

カットの仕方は2本の場合、カットとカットが1/3程度重なるように、かつパンの中心にカットが収まるようにいれます。

カットを入れる作業は難易度が高く、ここで失敗するときれいに焼き上がらない可能性があります。

心配なら、カットは1本にした方が難易度は下がります。同じようにカミソリを手前に倒して刃が斜めに入るようにし、パンの中心を端から端までカットします。

カットする際は深くカットし過ぎないように注意します。深くカットすると開いた部分の生地が厚くなり、その部分で口を切るくらいガリガリに硬く焼き上がってしまいます。

焼成

ここまで来たら、あとは焼くだけです。

事前にオーブンを250℃に予熱しておきます。この時、天板と、金属製の小さなバット等を一緒に入れた状態で予熱します。

フランスパンを焼く場合は下火が大切なのですが、天板ごと予熱しておくことでしっかり下火が入るようにします。

予熱の済んだオーブンに、パン生地をベーキングシートごと滑らせるように入れます。

その後、一緒に温めておいたバットに熱湯を100cc程度注ぎ入れて蒸気を出し、250℃で5分焼き、220℃に落として20分焼きます。

せっかく予熱したオーブンの温度が落ちないように、この作業はできるだけ手早く行いましょう。

なお、蒸気を出せるタイプのオーブンレンジをお使いの場合は、そちらの機能を使ってもらえればOKです。

220℃に落とした後、10分経ったらパンの前後や左右を入れ替え、できるだけ焼きムラが出ないようにします。その後再び10分焼き、ちょうどいい焼き色になれば完成です。

フランスパン作りの注意点

ここまでフランスパンの作り方を説明してきましたが、改めて注意すべきポイントを挙げていきます。

温度管理はきっちりと

フランスパンに限らず、パン作りでは温度管理がとても重要です。

  • こね上がった生地の温度(こね上げ温度)
  • 一次発酵の温度
  • 二次発酵の温度

この3つの温度はできるだけレシピに近づけられるようにすると、上手にパンを焼くことができます。

乾燥対策を忘れずに

これもフランスパンに限ったことではありませんが、パン生地はとても乾燥しやすいので、パン作り全体を通して乾燥対策を忘れずにしましょう。

特に一次発酵、二次発酵の間はしっかりと乾燥対策をします。何もせずにそのままパン生地を置いておくと、すぐに表面がカサカサになり、パン生地が膨らまなくなってしまいます。

パン生地の入ったボウルやバットにはラップをかけたり、濡れふきんを被せるなどの乾燥対策をしてくださいね。

発酵時間は目安として考える

温度管理はできるだけきっちりやりたいところですが、こね上げ温度を毎回きっちりレシピ通りにするのはプロでも至難の業です。

また、発酵温度も発酵器や発酵機能付きのオーブンが無いと正確に管理するのは難しいですよね。

そのため、実際には多少のズレができてしまうわけですが、温度にズレがあると発酵スピードが変わります。温度が高ければ発酵は早くなりますし、温度が低ければ発酵は遅くなります。

レシピに書かれている発酵時間は「こね上げ温度がレシピ通りで、かつレシピ通りの温度で発酵させたときに適正な発酵状態になる時間」です。

そのためレシピの発酵時間はあくまでも目安として考え、実際の温度に合わせて調整をする必要があることを覚えておきましょう。

焼成温度はオーブンによって多少異なる

焼成温度(パンを焼く時のオーブンの温度)はオーブンによって多少異なるため、調整が必要になる可能性があります。

温度調整の考え方は、焼成時間(焼き時間)がレシピ通りになるようにし、レシピ通りの時間で焼き色が薄いようなら次回は温度を上げて、逆に焼き色が濃くなってしまうようなら次回は温度を下げます。

「時間は変えずに温度を変える」ということを覚えておいてくださいね。

さいごに

今回はフランスパンをスタンダードな製法で作ってみましたが、いかがでしたでしょうか。

一次発酵だけで3時間、作業時間合計で5時間強と、なかなか時間がかかりますが、とてもスタンダードでトラディショナルな製法なので、パン作りが好きならぜひ一度は体験してみるのもいいんじゃないかなと思います。

実はもっと時短できる製法もありますが、それはまた別の記事で紹介したいと思います。

フランスパンはパン屋さんで買うと割高ですし、かといってスーパーで売っている袋入りのフランスパンは本物のフランスパンとは別物ですから、こういったパンこそおうちで作るのがおすすめです。

ぜひおうちパン作りを楽しんでくださいね!

他のパンの作り方はこちら