パン屋さんが教えるシンプルなちぎりパンの作り方・レシピ【型はフライパンで代用可(条件あり)】

どうも、現役パン職人のけん(@pansyokunin_ken)です。

今回はシンプルなちぎりパンの作り方とレシピを紹介していきます。

ちぎりパンは小さなパンをいくつもくっつけて焼き上げたパンで、手で簡単にちぎって食べることができます。

ちぎりパンは様々なバリエーションがあります。例えば、形は丸形や四角、棒状のものなどがありますし、中身にクリームなどを包むのかどうか、パンをカットして間にクリームなどをはさむのかどうかなどの違いがあります。

メジャーなちぎりパンとして、コンビニで売られているのを見たことがあると思います。棒状のちぎりパンにクリームが挟んであるやつですね。

今回紹介するちぎりパンは、丸形で中に何も入っていないシンプルなちぎりパンです。

そのままシンプルな生地の味を味わうのもいいですし、ちぎってからジャムなどをつけて食べるのも良いと思いますよ。

ぜひシンプルなちぎりパンの作り方を覚えていって下さいね!

ちぎりパン作りに必要な道具や材料は、別の記事で紹介している「基本のテーブルロール」とほとんど同じです(使う材料は同じでも配合は異なります)。

パン作り初心者で、必要な道具や材料が分からない!という方はそちらの記事をご覧いただき、まず必要な道具や材料をそろえて頂くとスムーズにパン作りをスタートできると思いますよ。
【参考記事】パン屋さんが教える基本のテーブルロールの作り方・レシピ

専用の型はフライパンで代用できる(条件あり)

丸形のちぎりパンを作る場合、ケーキ用の丸い型を使うことになります。

普段お菓子作りをされている方ならケーキ型を持っているかもしれません。その場合はそちらを使って頂ければと思います。

ちなみにスクエア型を使えば四角いちぎりパンが焼けますので、お好みでそちらを使って頂いてもOKですよ!

ですが、今回は通常のケーキ型は使わず、フライパンを使って丸形のちぎりパンを焼いていこうと思います。

専用の型はフライパンで代用することができますが、一点注意が必要なことがあります。

それは、フライパンがオーブン調理に対応しているかどうかということです。

ちぎりパンは最終的にオーブンに入れて焼くことになるので、フライパンがオーブン調理に対応していないと、使うことができません。

取っ手がとれるタイプのフライパンや、取っ手の部分が金属製のフライパンなど、オーブン調理可のフライパンをお持ちの方は、参考にしてみて下さいね。

もしお持ちでない場合は、ケーキ型を買ってしまった方が安上がりかもしれません。今は100円ショップでもケーキ型を売っていますからね。

シンプルなちぎりパンレシピ

それでは早速シンプルなちぎりパン作りを始めていきましょう!

まずはレシピを紹介します。

材料(直径17cmのフライパン1個分)

  • 強力粉・・・200g
  • 砂糖・・・30g
  • 塩・・・3g
  • インスタントドライイースト・・・4g
  • 脱脂粉乳(スキムミルク)・・・6g
  • 全卵・・・40g
  • バターもしくはマーガリン:20g
  • 水・・・92g

ちぎりパンの配合は砂糖が多い(小麦粉100gに対して15g)ため、インスタントドライイーストは下で紹介している「サフインスタントドライイースト金」のような耐糖性のあるものを使いましょう。
そうでないもの使っても作ることはできますが、発酵が鈍くなる可能性があります。

工程(作り方)

  1. ボウルにバター以外の材料を全て入れ、滑らかになるまでこねる。
    バターを加え、再び滑らかになるまでこねる(仕込み)。
    生地がこね上がったら生地温度をチェックする。目標こね上げ温度は27℃。
  2. 生地が乾燥しないようにボウルにラップや濡れ布巾をかけ、30℃で約50分間発酵させる(一次発酵)。
  3. 生地を作業台に出し、9等分する(1個あたり約43g)。分割した生地は断面や細切れになった生地を隠すように中に入れ、表面をきれいに張らせる(まるめ)。
  4. 生地が乾燥しないようにビニール袋や濡れ布巾を被せ、20分間生地を休ませる(ベンチタイム)。
  5. 手で軽く押さえるようにしてガスを抜き、まるめて表面をきれいに張らせる。裏側の閉じ目を手でつまんで閉じる。


    まるめが難しい、もしくはよく分からない場合はガス抜きの後に生地の裏面を上にして端から巻いていき、90℃向きを変えて再び端から巻いていく。

    その後、生地の四隅を一カ所にまとめてつまんで閉じれば同じ状態になるのでこの成形でもOK。
    まるめ終わったら、型(今回はフライパン)に均等に並べる。
  6. 乾燥に注意しながら、38℃で約50分発酵させる(二次発酵)。
    およそ2倍近い大きさまで膨らめばOK。
  7. 刷毛を使って表面に溶き卵を塗る(塗り卵)。
    二次発酵が終わった生地はとてもデリケートで、刷毛で突っついたり潰したりしてしまうとガスが抜けて膨らまなくなってしまうので注意して優しく塗る。
    生地と生地の間や生地の側面も丁寧に塗る。塗れているところとそうでないところがあると焼き色にムラができるので注意。
  8. 170℃に予熱したオーブンで約15分焼成する。
  9. 焼き色を確認し、問題なければオーブンから取り出す。
    型(今回はフライパン)ごと10cmくらい持ち上げて木の板などの上に軽く落とす(ショック)。

シンプルなちぎりパン作りの注意点

シンプルなちぎりパン作りの工程をざっと紹介しましたが、上手にちぎりパンを作るためにはおさえておいて欲しい注意点がいくつもあるので、工程についてもう少し詳しく説明しますね。

イーストと塩は直接触れないようにする

一番最初の生地作りの際に、ボウルにバター以外の材料をすべて投入しますが、この時にイーストと塩が直接触れないようにしましょう。

イーストと塩が直接触れている状態が長い時間続くと、イーストが死んで発酵が鈍くなる可能性があります。

ちょっと触れる程度では問題ありませんが、長時間直接触れ続けないように注意しましょう。

ちぎりパン生地はしっかりこねる

パン作りの最初の工程である「仕込み」ですが、パンの美味しさの8割は仕込みで決まると言われるくらい、重要な工程です。

ちぎりパンはふわっと膨らんで柔らかい食感の方が良いですよね!

こういったちぎりパンを目指す場合、パン生地はしっかりこねる必要があります。

ミキサーやニーダー、ホームベーカリーを使ってこねる場合は機械の力を使えるので比較的楽ですが、手ごねの場合は十分すぎるほどこねないとふわっとしたちぎりパンにはなりません。

さらに、上記の工程1で説明した通り、まずはバターを入れずにしっかりこねて、そこからバターを入れて再びしっかりこねる必要があります。2段階になっているわけですね。

バターを入れると一度まとまった生地が一旦バラバラになります。

今回のちぎりパンは、小麦粉100gに対して10gのバターを入れていますが、この量はテーブルロールや食パンに比べると多めです。

バターが多めに入っている分、他のパン以上にしっかりこねる必要があります。手ごねの場合は、頑張ってこねましょう。

理想のこね具合は、生地の一部をちぎってゆっくり伸ばしたときに、薄い膜状になって反対側の指の指紋が透けて見えるくらい滑らかに伸びる状態です。

ただ実のところ、ここまでの状態にするには、業務用の力の強いミキサーを使わないと難しいんですよね。

私はちぎりパンを作る時はホームベーカリーのこね機能を使いますが、それでも理想のこね具合にはなりません。

さすがに自宅に業務用機材は設置できませんし、多少こねが足りなくても美味しいちぎりパンは作れるので、生地が滑らかになりツヤが出てくればOKです!

できるかぎり目標こね上げ温度に近づける

工程1で「目標こね上げ温度は27℃」と書きましたが、生地がこね上がった時の温度(こね上げ温度)は非常に重要で、パンの品質に大きく影響します。

できるかぎり目標こね上げ温度の27℃に近づけられるように生地を仕込みしましょう。

具体的には、水の温度を調整してこね上げ温度をコントロールします。

ここで難しいのは、一概に「〇〇℃の水で仕込めばOK」と言えないところです。

こね上げ温度は水の温度の他に、室温や材料の温度、こねる時間やこね方(手ごねなのか機械ごねなのか)の影響を受けてしまうので、誰がいつどこでやっても同じ、とはならないんです。

なので実際には一度やってみて、その結果を記録しておいて次回に活かすと徐々に狙った温度で生地をこね上げることができます。

初めてテーブルロール作りをする方は、目安として夏場は冷水(約5℃)、冬場はぬるま湯(約30℃)、春と秋は常温の水で仕込むと良いと思います。

この上げ温度がズレた時の対処法

できるだけこね上げ温度を目標に近づけたくても、上手くいかないことも多いと思います。

生地温度のコントロールは難易度が高めなので、特に初心者の場合は上手くいかなくて当たり前かもしれませんね。

では、こね上げ温度がズレてしまった場合はどうしたらいいかというと、その後の一次発酵と二次発酵の時間を調整することで対処します。

目安としては、こね上げ温度が目標よりも1℃高かったら一次発酵を10分短く、反対に1℃低かったら一次発酵を10分長くとります。

これはあくまでも目安なので、実際の生地状態を確認しながら調整することになります。

生地温度が高い、もしくは低いと、一次発酵で調整したとしても二次発酵にかかる時間が変わります。

生地の膨らみ具合を見ながら、焼くタイミングを調整しましょう。

乾燥対策をする

パン生地は非常に乾燥しやすく、裸で放置しておくとすぐに表面がカサカサになってしまいます。

パンは乾燥すると、その部分は上手く発酵せず、焼き上がったパンの表面に小さなブツブツが出てきてしまいます(これを専門用語で「梨肌」と言います)。

これを防ぐために、一次発酵、ベンチタイム、二次発酵の間は必ず乾燥対策をして下さい。

具体的にはラップや濡れ布巾、ビニール袋を被せます。この時生地にくっつかないように注意して下さいね。

季節や環境により、特に乾燥が激しい場合は霧吹きで水分を補ってあげると良いでしょう。

発酵時の温度管理は工夫で乗り切る

工程2の一次発酵と、工程6の二次発酵はちょうどいい温度が決まっています。一次発酵は30℃で、二次発酵は38℃ですね。

これはイーストが熟成する温度(30℃・一次発酵)と、発酵してどんどんガスを作り出す温度(38℃・二次発酵)に合わせた温度設定になっています。

ですから理想としては30℃の部屋と38℃の部屋を用意できればいいのですが、なかなか難しいですよね。

発酵機を買えば問題ないのですが、それなりに高価なので、できれば上手く工夫して乗り切りたいところです。

その工夫というのは、簡単に言えば「できるだけ温かいところを探したり、作り出したりして、そこに置いておく」というやり方になります。

一次発酵に適した温度は30℃なので、夏場は室温でも問題なく発酵します。エアコンをつけている場合は、冷気の当たらないところや、エアコンを使っていない部屋があればそこに置いておくのが良いでしょう。

それ以外の季節は、一番お手軽なのはオーブンレンジの発酵機能を使うことですね。

他には、お湯を沸かし、お湯を入れた容器と一緒にパンにビニール袋を被せて保温、保湿するという方法もあります。

暖房を使う季節なら、その近くでも良いかもしれませんね。

二次発酵に適した温度は38℃なので、予熱中のオーブンの上に置いておくのが一番簡単だと思います。

ただし予熱中のオーブンは熱くなるので、直置きはできません。

私はいつも予熱中のオーブンの上に金属製のケーキクーラーを置き、その上に木の板を乗せ、更にその上にパン生地をのせたフライパンを置いて二次発酵を行っています。

いずれにしても、発酵させる場所の温度を温度計で測っておいた方が良いですね。

適度に手粉(打ち粉)を使う

工程3以降は分割やまるめ、成形など、パン生地に手を加えていくことになります。

十分にこね、適度に一次発酵させたパン生地はこね上がり直後に比べてべたつきは収まります。

ですが、それでもパン生地は手やドレッジにくっつきやすいので、適度に手粉(打ち粉)を使って扱うようにしましょう。

手粉はパン生地仕込みに使った粉を使うのが基本ですが(今回は強力粉)、少量使う分にはどんな粉でもOKです。

私は某業務スーパーで売っている安い中力粉を使っています。高い粉だともったいないですからね!

手粉は使いすぎると粉が残ってしまうので要注意ですが、使わな過ぎて生地が傷むのも良くないです。

手粉の使用量は「生地が傷まない範囲でできるだけ少なく」と覚えておきましょう。

パン生地の分割時はデジタルスケールを使う

工程3で生地を9等分しますが、この時はデジタルスケールを使って正確に9等分して下さい。

レシピ通りに作ると生地全量で395gになるので、1個当たり約43gになるはずです。

「正確に」といっても、1~2gの誤差は問題ありません。ですが、量らずに目分量で分割して大きな差ができてしまうと、パンが均一な焼き色で焼けない可能性があります。

パン生地中のガスはしっかり抜く(生地が痛まないように注意)

工程5でちぎりパンを成形していますが、パン生地のガス抜きをする時は、大きなガスが残らないようにしっかりガス抜きをして下さい。

ここで均一にしっかりとガスを抜くことで、焼き上がったパンの中身が目の細かいしっとりしたものになります。

ではガス抜きが足りないとどうなってしまうかというと、パンの中にガスの気泡が残り、「焼き上がったパンを切ってみたら中に穴が開いていた」ということが起こる可能性があります。

また、大きな気泡がパンの表面に残っていると、そのままの状態で焼き上がってしまいます。

それを防ぐためにもしっかりとガス抜きをして欲しいのですが、しっかりガスを抜こうとして生地を潰し過ぎてしまうと、生地が切れて傷んでしまいます。

そうすると傷んだ部分の生地が上手く膨らまず、その部分だけ硬くなったり、パンを切った時に膨らまなかった部分が模様のように残ってしまうことがあります。

やり過ぎても、やらな過ぎても良くないので難しいところですが、ガス抜き不足と生地の痛みを意識して成形していきましょう。

ショックのやり忘れに注意

工程9でちぎりパンが焼き上がったら、型ごと10㎝くらい持ち上げ、木の板などの上に落として下さい。この作業を「ショック」と言います。

これをすることでパンの中の熱い蒸気が外へ逃げ、代わりに外気が入るので、冷めた時にパンがしぼんでしまうのを防ぐことができます。

ショックは忘れずにやるようにして下さいね!

ショックは強い力をかける必要はありません。何度も強く衝撃を与えるとパンが潰れてしまうので気を付けましょう。

シンプルなちぎりパン作りにチャレンジしてみよう!

ここまでシンプルなちぎりパン作りについて、レシピや作り方を紹介してきましたがいかがだったでしょうか?

記事冒頭でも紹介しましたが、ちぎりパンは色々なバリエーションがあります。

中身を入れてみたり、四角い型を使って焼いたり、生地の配合を変えて白っぽく焼くことも出来ます。

多くの方がちぎりパンのレシピをネットやSNSで紹介しているので、チャレンジしてみるのも楽しいと思います。

今回紹介したのはとてもシンプルなちぎりパンですが、シンプルな分、基本のちぎりパンとも言えるんじゃないかなと思うんですよね。

シンプルなちぎりパンが上手に作れるようになれば、色々な種類のちぎりパンを作る時にきっと役立つはず!

そういうわけで、ぜひシンプルなちぎりパン作りにチャレンジしてみて欲しいと思います。パン作りを楽しんでいきましょう!

その他の基本のパンの作り方