どうも、パン職人のけんです。今回はおうちで全粒粉ベーグルを焼いてみました。
ベーグルは一時期流行ったパンですし、専門店もあるくらいなので、皆さんよくご存じのパンだと思います。
ドーナツのように真ん中に穴の開いた丸いパンですが、ベーグルはドーナツとは違ってむぎゅっとした詰まった食感で、しっかりとした食べ応えのある食事パンです。
ベーグルはパンにしては珍しく一次発酵をとらず(レシピによってはとるものもある)、かつ水の量が少な目の硬い生地で作るため、しっかりと詰まった食感になります。
また、焼く前に茹でる(ケトリングする)ことでパンの表面が糊化して固まり、焼いた時に膨らみにくくなることも、詰まった食感と関係しています。
ベーグルは一次発酵をとらないこともあり、パンにしては比較的短時間で作ることができます。これも魅力的なポイントですね。
今回のレシピだと合計作業時間は約1時間40分です。別の記事で説明したスタンダードな製法のフランスパン作りでは合計作業時間が5時間強かかるので、そちらと比べるとはるかに短時間でパンを作ることができます。
なお、今回の全粒粉ベーグル作りは動画でも紹介しています。
動画では長さの都合上、詳細な説明を省いている部分もあり、こちらの記事の方が詳細に説明していますが、動画の方が分かりやすい部分もあると思うのでよろしければ併せてご覧ください。
それでは作り方を紹介していきますね!
目次
全粒粉ベーグルのレシピ(材料)
まずは全粒粉ベーグル作りに必要な材料・レシピを紹介します。
【レシピ(6個分)】
- 強力粉:270g
- 全粒粉:30g
- 砂糖:12g
- 塩:6g
- インスタントドライイースト:2.4g
- 水:168g
※ベーグルを茹でる際に、モルトシロップかはちみつを使います。お湯1Lに対してモルトシロップなら大さじ1/2、はちみつなら大さじ1必要です。
強力粉
ベーグル作りでは強力粉と呼ばれる小麦粉を使います。
強力粉はスーパーで売っていますし、手に入りやすい食材ですよね。
強力粉はいろいろなメーカーのものがあり、それぞれ微妙な違いがありますが、基本的には強力粉であればどれでもOKです。
一番メジャーな強力粉と言えば、日清製粉のカメリヤです。
スーパーでもよく見かけると思いますが、プロのパン職人も使う強力粉なので、強力粉で迷ったらカメリヤを選んでおけばまず間違いはありません。
全粒粉
全粒粉は小麦の粒を丸ごと製粉した小麦粉です。
白い小麦粉とは違い、小麦の表皮(ふすま)や胚芽の部分も含まれているため、白い小麦粉と比べて栄養価が高いのが特徴です。
全粒粉を使うと栄養面だけでなく、香りや味わいにも変化があります。
今回のレシピでは全粒粉を小麦粉全体の10%ほど入れています。たった10%と思うかもしれませんが、全粒粉特有の香ばしい香りや自然な甘みを感じることができると思いますよ。
私はAmazonの全粒粉をよく使っています。
全粒粉の香りや味わいが苦手な場合は、入れなくても作ることができます。その場合は、強力粉300gでお作りください。
砂糖
砂糖はおうちにあるものを使ってもらえればOKです。
私は普段、パン作りに限らず料理でも三温糖を使っているので、今回は三温糖を使っています。
塩
塩もおうちにある塩を使ってもらえればOKです。
こだわりたい方は、フランス産のゲランドの塩はいかがでしょうか。私も以前使っていたことがありますが、美味しい塩です。
正直なところ、ベーグルで塩の違いを感じられるかは微妙なところですが、フランスパンなどのシンプルな配合のパンを作る機会があるのなら持っていてもいいと思います。
インスタントドライイースト
イーストには顆粒状の(インスタント)ドライイーストと、しっとりとした生イーストがありますが、おうちでパンを焼く場合はインスタントドライイーストが便利です。
生イーストには生イーストの良さがありますが、手に入れづらく価格が割高で、更に期限が短いため、おうちでのパン作りでは扱いづらいと思います。
インスタントドライイーストはスーパーで売っているものを使ってもいいですが、今回使っているのは「サフインスタントドライイースト赤」という、プロのパン職人も使うイーストです。
こちらは小分けタイプもあるので、頻繁にパン作りをしない人にもおすすめです。
水
水は水道水でも十分ですが、こだわりのある方はミネラルウォーターを使ってもいいでしょう。
ただ、硬水はパン生地を引き締める効果があるため、入れすぎには注意が必要です。コントレックスなどの超硬水を使う場合は、水全体の20%程度にしておきましょう。
モルトシロップ
モルトシロップはあまり聞きなれない材料かもしれませんが、フランスパンなどのシンプルな配合のパン作りではよく使います。
ベーグル作りではパン生地には入れませんが、茹でる際にお湯に溶かします。そうすることで、ベーグルの表面につやが出て、焼き色もきれいにつきます。
かなり専門的な食材なので、お持ちでなければはちみつでも代用できますが、フランスパンを作る機会があるなら用意しておけばそちらでも使うことができます。
全粒粉ベーグルの作り方(工程)
全粒粉ベーグルのレシピ・材料を確認したら、さっそく作り方を見ていきましょう。
全粒粉ベーグルは以下の工程で作ります。
- 生地仕込み
- 分割・まるめ
- ベンチタイム
- 成形
- 二次発酵
- ケトリング
- 焼成
生地仕込み
まずはベーグルの生地を仕込みます。
今回のレシピでは強力粉と全粒粉で合わせて300gですが、この程度の量なら手ごねで十分作れます。
ベーグルは硬い生地なので、むしろ手ごねの方がいいかもしれません。ホームベーカリーやスタンドミキサーでもできるとは思いますが、機械に負担がかかる恐れがあります。
材料を全てボウルに入れ、こねていきます。水は夏場なら冷水、それ以外はぬるま湯を使います。
材料を入れる順番はあまり気にしなくてOKですが、塩とイーストが直接触れ合わないように気を付けましょう。
塩とイーストが直接触れ合うと、イーストが弱って発酵力が落ちる可能性があります。ちょっと触れるくらいなら問題ありませんが、長時間触れ合ったままにならないように気を付けてください。
10分程度こねます。生地がまとまり、多少滑らかさが出てくれば生地の仕込みは完了です。

多くのパンは生地が滑らかになるまでしっかりこねますが、ベーグルは上の画像のように多少ボソボソ感が残っていて大丈夫です。
分割・まるめ~ベンチタイム
この記事の冒頭で少し触れましたが、今回のベーグルは一次発酵をとりません。そのため、生地ができ上ったらすぐに分割をします。
今回のレシピはベーグル6個分なので、生地を6等分します。
レシピの材料の量を全て足すと約488gになります。これを6等分すると1個あたり約81gになりますが、実際には多少のロスがあるはずなので、1個あたり約80g前後になるように分割します。
分割する際はデジタルスケールを使って量りながら分割することをお勧めします。目分量で6等分でもいいのですが、大きさに差があると焼きムラが出やすくなります。

分割はプラスチック製のカードかナイフを使うとやりやすいと思います。硬い生地の場合はナイフを使うと手が痛くならないのでおすすめです。手を切らないように注意してくださいね。
できるだけ細切れの生地を作らずに分割できるといいのですが、全てドンピシャで分割するのはさすがに無理なので、「できる限り」細切れにならないように意識しましょう。
分割が終わったら生地をまるめます。
「まるめ」というのは単に生地を丸くするだけではなく、生地の断面や細切れの生地を内側に隠し、表面を張らせる作業です。
やり方は文字で説明するのが難しいので動画を見ていただくのが分かりやすいと思います。
いまいちよく分からないという場合は、生地を手のひらで押さえて伸ばし、細切れ生地を内側に入れ、端を一箇所に集めて指でつまんで閉じればそれでOKです。
次の成型がしやすくなるように生地を休ませる時間のことをベンチタイムと言いますが、丸めが終わったらベンチタイムを20分間とります。
生地が乾燥しないように注意してくださいね。
成形~二次発酵
ベンチタイムが終わったら成形をしてきます。
めん棒を使って、生地を楕円形に伸ばしていきます。

伸ばしたら生地のきれいな面を下にして90度向きを変え、横長の生地を上から下へ巻いていきます。

最後はしっかりと指でつまんで閉じてください。硬い生地なので、しっかり閉じないと開いてきてしまいます。

棒状の生地ができたら、転がしながら伸ばしていきます。この時、端から端まで同じ太さではなく、片方の端だけ細くなるようにしておきます。

閉じ目を上にした状態で太い方の端を手のひらで押して薄く伸ばし、細い方の端を包むように閉じます。

これで成形完了です。

成形する時に、棒状にした生地を長く伸ばすと細くなり、真ん中の穴は大きくなります。生地が細い分ベーグル特有のむぎゅっとした食感は控えめになり、食べやすいベーグルになります。
反対に短い生地で成形すると真ん中の穴は小さくなります。生地が太い分食感はむぎゅむぎゅ感が強くなり、食べ応えのあるベーグルになります。
これは好みなので、お好みの形に成形していただけたらと思います。
個人的にはむぎゅっと詰まったしっかりした食感のベーグルが好きですが、見た目のバランスも考えて、上の画像のような形に成形してみました。
全て成形が終わったら、乾燥しないように注意しながら30℃で約40分間二次発酵をとります。
ケトリング
二次発酵が終わったらケトリングを行います。
ケトリングとは、ベーグルを焼く前に一度茹でる作業のことです。これをすることで、ベーグルにモチモチ食感が生まれ、表面がツヤツヤになります。
二次発酵の終わりに合わせて、大きめの鍋にお湯を沸かし、モルトシロップかはちみつを溶かしておきます。
お湯はグラグラと沸いていると生地を傷めてしまうため、一度沸いたら火を弱め、ふつふつと沸いている状態にします。
準備ができたら、ベーグル生地の上面から茹でていきます(閉じ目を上にします)。

ベーグル生地は手で持ってやさしくお湯に入れていきます。
ベーグル生地は硬めなので、二次発酵が終わった生地を直接手で持っても生地は傷みにくいです。ガスが抜けないように注意しつつ、やさしくお湯に入れましょう。
二次発酵時に加湿が強いと、手で持った時に手に生地がくっついてしまうことがあります。
その場合は二次発酵が終わる少し前に、乾燥対策のためにかけていたビニール等を外し、少しだけ表面を乾かしてあげるとくっつきません。
それでも心配な場合は、ベークル一個分のサイズに切ったベーキングペーパーを用意し、成形が終わったらこれに乗せて二次発酵をとります(肉まんみたいな状態)。
こうすることでケトリング時に直接ベーグル生地に触らずにお湯に入れることができます。
お湯に入れてから40秒経ったらひっくり返し、反対側も40秒茹でたら水を切ってベーキングペーパーを敷いた天板に乗せます。茹で過ぎると表面がしわしわになる要因になるので注意しましょう。
二次発酵~ケトリング~焼成の工程は間が空かないように注意しましょう。二次発酵が終わってからお湯を沸かし始めたのでは発酵過多になってしまいますし、ケトリング後はすぐに焼かないと表面にしわができてしまいます。
焼成
ケトリングが終わったら、すぐに焼成をします。
事前にオーブンを200℃に予熱しておき、約18分焼きます。ちょうどいい焼き色が付けばベーグルの完成です。

全粒粉ベーグル作りの注意点
ここまで全粒粉ベーグルの作り方を説明してきましたが、改めて注意すべきポイントを挙げていきます。
温度管理はきっちりと
ベーグルに限らず、パン作りでは温度管理がとても重要です。
パン作りでは、
- こね上がった生地の温度(こね上げ温度)
- 一次発酵の温度
- 二次発酵の温度
この3つの温度をできるだけレシピに近づけられるようにすると、上手にパンを焼くことができます。
ただ、今回の全粒粉ベーグルの場合、こね上げ温度はあまり気にしなくてもOKです。レシピにも書いた通り、夏場は冷水、それ以外はぬるま湯を使えば大体適したこね上げ温度になるはずです。
また、一次発酵をとらないので一次発酵の温度も関係ありません。二次発酵の温度だけ注意し、できるだけ30℃に近い環境で発酵をとれるようにしましょう。
乾燥対策を忘れずに
これもベーグルに限ったことではありませんが、パン生地はとても乾燥しやすいので、パン作り全体を通して乾燥対策を忘れずにしましょう。
何もせずにそのままパン生地を置いておくと、すぐに表面がカサカサになり、パン生地が膨らまなくなってしまいます。
パン生地の入ったボウルやバットにはラップをかけたり、濡れふきんを被せるなどの乾燥対策をしてくださいね。
発酵時間は目安として考える
温度管理はできるだけきっちりやりたいところですが、正確に管理し続けるのは難しいですよね。
そのため、実際には多少のズレができてしまうわけですが、温度にズレがあると発酵スピードが変わります。温度が高ければ発酵は早くなりますし、温度が低ければ発酵は遅くなります。
レシピに書かれている発酵時間は「レシピ通りの温度で発酵させたときに適正な発酵状態になる時間」です。
そのためレシピの発酵時間はあくまでも目安として考え、実際の温度に合わせて調整をする必要があることを覚えておきましょう。
焼成温度はオーブンによって多少異なる
焼成温度(パンを焼く時のオーブンの温度)はオーブンによって多少異なるため、調整が必要になる可能性があります。
温度調整の考え方は、焼成時間(焼き時間)がレシピ通りになるようにし、レシピ通りの時間で焼き色が薄いようなら次回は温度を上げて、逆に焼き色が濃くなってしまうようなら次回は温度を下げます。
「時間は変えずに温度を変える」ということを覚えておいてくださいね。
さいごに
今回は全粒粉ベーグルの作り方を説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
ベーグルはパンにしては比較的短時間で作ることができ、そのまま食事パンとして食べても美味しいし、サンドイッチにも合う便利なパンだと思います。
ケトリングが手間と言えば手間ですが、さっと茹でるだけなので慣れてしまえば簡単です。
今回はプレーンなベーグルを作りましたが、具材を包み込んでいろいろなバリエーションのベーグルを作ることもできますよ!
ベーグル専門店で買うとそれなりにお値段もしますが、自分で作ればコスパもいいし、何よりパン作りを楽しめて一石二鳥だと思います。
ぜひベーグル作りにチャレンジしてみてくださいね!