どうも、パン職人Kenです。
パン作りって本当に楽しくて、一度やったらやめられない!
でも仕事や家事、育児が忙しくてなかなかパン作りができない!って方もたくさんいらっしゃると思います。
パン作りができないのは何と言っても「パン作りは時間がかかるから」ですよね。
普通の製法でパンを作る場合、パン生地の仕込みから焼き上がりまでにかかる時間は食パンやコッペパンでおよそ3時間、特に時間のかかるフランスパンでは5時間半近くかかってしまいます。
これを考えると、パン作りをする時間を確保するのが大変に思えてしまいます。
でも、それは普通の製法でパンを作る場合のお話。
ここで言う普通の製法とは、パン生地を捏ね始めてから焼き上げまで途中で工程を止めることなく進めていくストレート法という製法です。
ストレート法でパン作りをする場合は途中で工程を止めることが出来ません。ですからまとまった時間が必要になってしまいます。
では工程を途中で止めることが出来たとしたら、3時間~5時間半というまとまった時間を確保できなくてもパン作りができますよね?
それを実現するための方法が、今回紹介する「オーバーナイト法」なんです!
目次
「オーバーナイト法」はパンの製法の一つ
それでは早速オーバーナイト法について解説していきます。
動画でも解説しているので、動画の方が見やすい!という方はこちらをどうぞ↓
オーバーナイト(over night)とは一晩中、宵越しという意味ですが、その名の通りパン生地を一晩中発酵させる製法なんです。
パン作りの工程は上の図の通りですが、オーバーナイト法では「②一次発酵」の工程を一晩かけて行います。
一晩かけて発酵させることでどんな良いことがあるかというと、
- 一次発酵で工程をストップすることができる
- 長時間発酵させることで香りや風味、旨みが増す
こういった良いところがあるんです。
オーバーナイト法ならパン作りを2日に分けられる
なぜオーバーナイト法が忙しい人のパン作りを助けてくれるのかというと、パン作りの工程を途中でストップすることができるからです。
先ほども説明したように、オーバーナイト法でのパン作りでは一次発酵を一晩中行います。
それにより、パン作りの工程を2日に分けることが出来ます。
例えば一日目はパン生地を仕込んで一次発酵をオーバーナイト法で行い、二日目は分割から工程を再開して焼き上げまで行うということが出来るんです。
この方法でコッペパンを作った場合、一日目の作業でかかる時間は50分程度ですし、二日目の作業は分割~焼成までで2時間かからないくらいです。
ストレート法の場合まとめて3時間必要になるのに比べたら、時間の確保は多少なりともしやすくなるのではないでしょうか?
更にフランスパンの場合は一日目は同じく50分程度で済みますし、二日目に至っては2時間ちょっとで済みます。
ストレート法の場合まとめて5時間半かかるのと比べたら、とても時短できていると言えるのではないでしょうか。
パン生地を一晩中発酵させたら過発酵にならないの?
ここまでの解説に関して、パン作りをしたことのある方なら疑問に思う所があるかもしれません。
「『オーバーナイト法では一次発酵を一晩かけて行う』って、一晩発酵させたら過発酵になるんじゃないの?」
そう思った方は鋭いですね!
通常のストレート法では一次発酵は1時間程度で、長くても3時間です。
それなのに一晩中一次発酵させたら普通は過発酵になってしまいます。
ではオーバーナイト法では過発酵させずにどの様にして一晩中発酵させるのかというと、生地を冷蔵庫に入れて一晩越します。
ストレート法では生地を冷やすのは良くないことなのですが、オーバーナイト法の場合は冷蔵庫で生地を冷やし、発酵を遅らせることで一晩中発酵させても大丈夫な状態にするんですね。
具体的には生地の仕込みが終わったらパン生地をバットにあけ、30分程度室温で一次発酵を行った後に生地が乾燥しないようにビニール袋に入れて冷蔵庫に入れて一晩越します。
オーバーナイト法でパン作りをする際の注意点
使いこなすと非常に便利なオーバーナイト法ですが、上手に使いこなすために注意すべき点が3つあります。
それは、
- 温度管理
- 時間
- 乾燥対策
この3つです。
1.温度管理
パン生地の発酵と温度管理は切っても切れない関係にあります。
オーバーナイト法では先ほども説明したように、生地が捏ね上がったら30分程度室温においてから冷蔵庫に入れます。
冷蔵庫に入れた生地はできるだけ早く冷えて欲しいので、冷蔵庫の中はできるだけ物が少ない方が良いです。
生地の冷えが悪いと発酵のスピードが遅くならず、過発酵になってしまう可能性があります。
また、一次発酵が終わって次の工程である分割を行う際には生地温度を10℃~15℃まで上げてやる必要があります。
生地が冷え切ったまま工程を進めてしまうと、最終発酵の時になかなか発酵が進まず余計に時間がかかったり、生地が上手く膨らまずに硬いパンになってしまう可能性があります。
分割を行う約1時間前には生地を室温に出しておきましょう。
2.時間
オーバーナイト法の一次発酵の時間は今まで「一晩」と表現してきましたが、目安としては12時間~20時間程度になります。
例えばお子さんをお持ちのママが、お子さんが寝静まった22時頃にパン生地を仕込んで冷蔵庫に入れたとしたら、次の工程に進めるのは最短で翌日の10時、最長でも18時ということです。
工程通りにきっちりと進めていく必要のあるストレート法と比べたらかなり時間に幅があるので、パン作りの予定は立てやすいかなと思います。
ただ、冷蔵庫に入れてから12時間~20時間の範囲内で次の工程を始めないといけないということを知っておいて下さい。
ちなみに発酵時間が短すぎる(12時間未満)と、発酵不足で生地の膨らむ力が弱かったり、焼き上がったパンの旨味や風味が弱くなる可能性があります。
反対に発酵時間が長すぎる(20時間以上)と、発酵過多で生地の膨らむ力が弱かったり、アルコール臭や酸臭といったいわゆる「発酵臭」がキツくなってしまいます。
時間をしっかりと守ってパン作りをしていきましょう。
3.乾燥対策
オーバーナイト法に限った話ではありませんがパン生地は非常に乾燥に弱く、乾燥対策をせずにパン生地を出しっぱなしにしておくとすぐにカサカサになってしまいます。
更に、パン生地は冷蔵庫の中の温度帯(5℃前後)では非常に乾燥しやすくなります。
オーバーナイト法では一次発酵は冷蔵庫の中で一晩行うと説明しましたが、乾燥しやすい環境の中で一晩越すために乾燥対策をする必要があります。
具体的には捏ね上がった生地を容れ物(バットやタッパーなど)ごとビニール袋に入れてから冷蔵庫に入れるといいですね。
便利さだけではないオーバーナイト法のパン作り
ここまでオーバーナイト法の「便利さ」にフォーカスして解説をしてきましたが、オーバーナイト法の良さは便利さだけではありません。
この記事の最初の方で少しだけ触れましたが、オーバーナイト法には「長時間発酵させることで香りや風味、旨みが増す」というメリットもあります。
冷蔵庫で生地を一晩寝かせている間、生地の中ではイースト菌が生地の中のたんぱく質を分解し、旨味成分や香り成分を作り続けます。
このイースト菌の働きにより、焼き上がったパンにも長時間発酵させたパン特有の旨味や香りが付き、美味しくなります。
この様に便利さの面でも美味しさの面でも優れたオーバーナイト法をぜひ覚えておいて下さいね。使いこなせるようになれば、忙しい方でもきっとパン作りを今まで以上に楽しめると思いますよ!