パン作りに欠かせないイースト菌について|イースト菌の働き・種類・おすすめのイースト菌

どうも、現役パン職人のけん(@pansyokunin_ken)です。

今回はパン作りに欠かせない材料の一つであるイースト菌について説明をしていこうと思います。

イースト菌はパン作りの要と言っても過言ではないくらい、とても重要な材料です。

イースト菌の働きのおかげでパン生地が膨らみ、ふわっと膨らんだパンを焼き上げることができます。

生地を膨らませるだけなら重曹やベーキングパウダーでも代用できそうに思えますが、実はイースト菌の働きは生地を膨らませるだけではありません。

イースト菌の持つ様々な働きによって、パンは美味しくなるんですよ!

今回はそんなイースト菌の働きや種類、おすすめのイースト菌について説明していきますね。

イースト菌の働きはパンを膨らませるだけじゃない!

パン作りに欠かせないイースト菌には、大きく分けて2つの働きがあります。

それは、

  • パンを膨らませる。
  • パンに独特の味や風味、香りをつける。

この2つです。

パンを膨らませる

パンはイースト菌の働きによって膨らみます。イースト菌などの発酵種の働きによって生地を膨らませてから焼くというのが、パンの特徴ですよね。

イースト菌は生き物なので、パン生地の中に練り込まれても、オーブンで焼き上げられるまでは生きています。

イースト菌は生地の中のでんぷんや糖分などをエサにして成長しますが、その過程で色々なものを作りだします。

この「イースト菌が分解して作り出されたもの」がパンの膨らみや味、風味や香りに大きく影響を与えるんですよ。

その中でも、イースト菌が作り出す炭酸ガスはパンを膨らませる効果があります。

イースト菌が作り出した炭酸ガスを、生地中のグルテンがキャッチすることでパンはふわっと膨らみます。

パンが膨らむことでふわっとした食感になり、パンはより美味しくなります。

パンに独特の味や風味、香りをつける

イースト菌はパンを膨らませるためだけに入れていると思いがちですが、実はもう一つの働きも美味しいパンを作るためにはとても大切です。

イースト菌は生地中のでんぷんや糖分などを分解しますが、それによって作られるのは炭酸ガスだけではありません。

イースト菌は炭酸ガスの他に、様々なアルコールや有機酸などを作り出します。

これらがパンに独特の味や風味、香りを付けています。

パンって独特の香りがありますよね。何となくアルコールっぽい感じの香りがするのがお分かりいただけるでしょうか?

パン作りをしていて、発酵させ過ぎてしまった経験のある方は分かるかもしれませんが、過発酵の生地はアルコール臭や酸臭がしっかりと出てきます。

発酵によって現れる香りを発酵臭と呼んでいますが、発酵臭からはイースト菌がアルコール類や有機酸などを作り出していることを感じることができます。

発酵させ過ぎると発酵臭が強くなってパンは美味しくなくなってしまいますが、適度に発酵させることでパンに独特の味や風味、香りが付き、より美味しくなるんですよ。

イースト菌も天然酵母?

世の中には「天然酵母パン」という売り文句で販売されているパンがたくさんありますが、天然酵母とイースト菌は何が違うのでしょうか?

イースト菌と天然酵母は正反対の物のようなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実はイースト菌は天然酵母の仲間なんです。

市販されているイースト菌は、自然に存在する天然酵母の中から、パン作りに適した単一の酵母を選別し、培養したものです。

製品としてのイースト菌は工場で製造されているので、そういった意味では人工的ですが、イースト菌そのものは自然に存在する天然酵母なんですよ。

一般的に天然酵母と呼ばれているものは麦や果実等の表面に付着している菌を培養したものです。

複数の菌が混ざっているため、イースト菌とは違った香りや風味を感じるパンを作ることができますが、発酵力は弱いです。

どちらが優れているというものではなく、それぞれの良さがあるので、好みで使い分けると良いと思います。

両方を使って良いとこどりをしたような製法もあるんですよ!

イースト菌の種類

イースト菌は様々な状態で販売されていますが、その状態によって4つの種類に分けられます。

それは、

  1. 生イースト
  2. ドライイースト
  3. インスタントドライイースト
  4. セミドライイースト

この4種類です。

生イースト

生イーストは最も水分量の多いイースト菌で、しっとりした粘土のような触り心地をしています。

生イーストはプロのパン職人にはとても馴染みのあるものですが、普通のスーパーに売っているようなものではないため、家庭でパン作りを楽しむ方にはあまり馴染みがないと思います。

生イーストはドライイーストと比べて発酵が早く、耐糖性があるので、砂糖が多めに入った生地に向いています。

また、パン生地を作った後に生地の状態で冷凍する製法に向いているイースト菌です。

水分が多いため、ドライイーストと比べて倍程度の量を使います。ドライイーストは微量しか入れないので家庭でのパン作りでは0.1g単位で計量する必要が出てきますが、生イーストは使用量が多くなるため計量しやすいというメリットがあります。

生イーストを使うデメリットは、入手がしにくいことと、保存性が悪いことです。

生イーストは普通のスーパーには売っていないため、製菓製パン用品の専門店に行くか、ネットで購入することになります。

近くにお店があればいいですが、ない場合はネットで購入することになるので、送料がかかってしまいます。

生イーストは1本500gのブロック状になっています。500gというのはおよそ食パン42斤分になるので、賞味期限の短さ(製造後約2週間)も相まって、なかなか使い切れません。

そうなると小分けタイプのものを買うことになりますが、割高になってしまいます。

こういった理由から、個人的には家庭でのパン作りで、あえて生イーストを使う理由はあまりないのかなと思います。

ドライイースト

ドライイーストは、「ドライ」の名の通り、生イーストの水分を約1/10まで乾燥させたものです。

乾燥させることで保存性が良くなり、生イーストよりも長い期間保存できるというメリットがあります。

顆粒状でさらさらしているので、扱いやすいのもいいですね。

ドライイーストと生イーストの大きな違いの一つに「予備発酵」の要不要があります。

生イーストは予備発酵不要ですが、ドライイーストは予備発酵が必要です。

予備発酵というのは、乾燥されたドライイーストが生イーストと同じように発酵できるように、事前にお湯に溶かして置いておく作業です。

乾燥して寝ているイースト菌をを起こしてあげるようなイメージですね。

そんなドライイーストですが、予備発酵の手間があるため、現在では予備発酵不要のインスタントドライイーストが主流になっています。

「ドライイースト」と書かれている商品でも、パッケージをよく見ると「予備発酵不要」と書かれていて、実はインスタントドライイーストだった、という商品もよく見かけますね。

ドライイーストを使って焼いたパンと、インスタントドライイーストを使って焼いたパンは、厳密には違いがあるので、ドライイーストは一部のこだわりのあるパン屋さんが使っているイメージがありますね。

特に強いこだわりが無いのであれば、後述するインスタントドライイーストをお勧めします。

インスタントドライイースト

インスタントドライイーストはドライイースト同様、生イーストを乾燥させたものです。

インスタントドライイーストの特徴は、さらさらとした顆粒状をしていて扱いやすく、長期保存ができて、予備発酵をせずに使うことができます。

ドライイーストの場合は予備発酵が必要なので、実際の工程を考えてみると

  1. ドライイーストを計量する。
  2. 約40℃のお湯を計量する(ドライイーストの約10倍量)。
  3. 量ったお湯とドライイーストを混ぜて、約15分放置する(予備発酵)。
  4. 他の材料と混ぜて生地を仕込む

このようにパン作りを進めなければいけません。

それに対し、インスタントドライイーストは直接粉に混ぜて使うことができます。とても便利ですね!

家庭でのパン作りでは、便利に使えて長期保存もできるインスタントドライイーストをおすすめします。

セミドライイースト

セミドライイーストは、生イーストとインスタントドライーストの中間のような特徴を持った新しいイースト製品で、フランスのイーストメーカーであるLESAFFRE(ルサッフル)社の独自製品です。

セミドライイーストはさらさらの顆粒状で、水分は生イーストよりも少なく、インスタントドライイーストよりは多い、名前の通り「セミドライ」なイーストです。

セミドライイーストはドライイーストやインスタントドライイーストと同じく、長期保存が可能です。

ただし、ドライイーストとインスタントドライイーストが常温保存可能(開封後は冷蔵保存)なのに対し、セミドライイーストは冷凍保存なので注意が必要です。

冷凍保存が必須のセミドライイーストですが、冷凍庫から出してすぐ使えて、予備発酵も不要なので、冷凍庫の空きさえあれば便利に使えるイーストなんですよ。

ドライイーストやインスタントドライイーストを使って作った生地は冷凍保存には向いていませんが、セミドライイーストを使って作った生地は冷凍保存に向いている点にも注目です。

このセミドライイーストは、比較的新しい製品だからかもしれませんが、現在の所業務用パッケージしか販売されていません。

400g入りなので、食パンに換算すると何と約84斤分!かなりの量になります。

ですが、賞味期限は冷凍保存(-18℃)で製造日から24カ月となっているので、定期的にパン作りをされる方なら使いきれるかもしれませんね。

おすすめのイースト菌

先ほどは4種類のイースト菌について説明してきましたが、この中でおすすめなのはインスタントドライイーストです。

インスタントドライイーストは予備発酵の手間もいりませんし、長期保存できるので家庭でのパン作りにはぴったりのイースト菌だと思います。

そんなインスタントドライイーストですが、色々な製品が販売されているので、その中から特におすすめのものを紹介します。

私がおすすめするのはルサッフル社のサフインスタントドライイーストです。

こちらはプロ御用達のイースト菌で、インスタントドライイーストといえばこれ、という程有名で質の良いインスタントドライイーストなんですよ。

サフインスタントドライイーストは、家庭でのパン作り向けに小分けタイプがあるのも嬉しいところです。

これなら、そこまで頻繁にパン作りをしないよ、という方でも安心して使うことができます。

実は、サフインスタントドライイーストには赤と金の2種類があります。

赤と金の違いは何かというと、耐糖性、つまりお砂糖の量が多い生地でもしっかり発酵してくれるかどうかという違いです。

赤はたくさんお砂糖の入った生地は苦手で、菓子パンのような甘いパンを作る場合は金の方が向いています。

具体的には、小麦粉100gに対してお砂糖の量が12gを超える配合の場合は、金の方が向いています。

赤はお砂糖が全く入らないフランスパンなどに特に向いていますが、小麦粉100gに対してお砂糖の量が12gを超えなければ対応できるようです。

小麦粉100gに対してお砂糖の量が12gを超えるパンというのは結構甘いパンで、菓子パンやブリオッシュなどに限られます。

こういったパンが作りたい場合は金、そうでなければ赤といった具合に使い分けると良いでしょう。

まとめ

今回はパン作りに欠かせないイースト菌について、その働きや種類、おすすめのイースト菌の紹介をしてきましたがいかがだったでしょうか。

今回の記事をまとめると、

  • イースト菌はパン作りの要と言っても良いくらい、重要な材料。
  • イースト菌の働きは、パンを膨らませることと、パンに独自の味や風味、香りを付けること。
  • 製品としてのイースト菌には生イースト、ドライイースト、インスタントドライイースト、セミドライイーストの4種類がある。
  • おすすめのイースト菌はインスタントドライイースト。
  • ルサッフル社のサフインスタントドライイースト赤・金が得におすすめ。

この様になります。

イースト菌が元気に安定して発酵してくれると、美味しいパンが焼けます。

そのため、家庭でのパン作りの場合は比較的安定した品質で長期保存できるインスタントドライイーストがおすすめですね。

個人的にはサフインスタントドライイーストをおすすめしますが、普通のスーパーには売っていないので、手に入りやすいものを使ってもらっても構いません。

まずは、必要な材料をそろえてぜひパン作りにチャレンジしてみて下さい!
【参考記事】パン屋さんが教える基本の食パンの作り方・レシピ

パン作りにハマってきたら、徐々にこだわりの材料をそろえていくのも楽しいと思いますよ!