どうも、パン職人Kenです。
今回はパン作り初心者に知って欲しい、基本の「温度」のお話をしていきますね。
パン作り初心者の方は温度と言われても「え?パン作りと温度って関係あるの?温度って何の温度?」と思うかもしれませんが、実は美味しいパンを作るためには温度は非常に重要なポイントの一つなんです。
以前の記事でも何度かこの話題に触れていますが、改めてパン作り初心者の方向けに温度の説明をしていきます。
目次
温度は美味しいパンを作るための4大ポイントの一つ
美味しいパンを作るためには絶対に押さえておくべきポイントが4つあります。それは、
- 温度
- 計量
- 時間
- 設備
この4つです。
(ちなみに上で紹介している記事の中で「3つのポイント」となっているのは「発酵のコントロール」にフォーカスしているからです。)
これはパン職人の業界では一般的に言われていることなのですが、温度が重要なのは4大ポイントの一つだからなんです。
美味しいパンを作るために温度が重要になる理由とは
ではなぜ温度がパンの美味しさと関係してくるのでしょうか。
それはパンが発酵種(イーストなど)という「生き物」の力で作られるからなんです。
発酵種はただパン生地を膨らませるだけでなく、生地を熟成させて風味や旨みも作り出しています。
パンの膨らみ具合は見た目や食感に大きく関わり、生地の熟成具合は味に直結します。
ですから美味しいパンを作るためには「いかに上手に発酵させるか」が大切なんですね。
そして上手に発酵させるためには生地の温度や発酵させる部屋の温度を適切にコントロールしてあげる必要があります。
私たちはちょうどいい気温の中では快適に暮らせますが、冬場で寒い日は体の動きが鈍くなったり、夏場の暑い日は熱中症で倒れてしまうこともあります。
発酵種は私たちと同じ生き物です。ですから、発酵種も適温ならばうまく発酵してくれますが温度が低いと発酵が鈍くなりますし、温度が高いと発酵が進み過ぎてしまいます。
こういった理由から、美味しいパンを作るためには適切な温度のコントロールが重要になってくるんです。
パン生地の温度管理が必要な4つの工程
ここでおさらいですが、パン作りの工程を見てみましょう。
これはパン作りの全部の工程を示した図ですが、温度のコントロールが必要になってくるのは
- 仕込み
- 一次発酵
- 二次発酵
- 最終発酵
この4つの工程です。
①仕込み
パン作りのスタートとなる仕込みですが、仕込みをする時にしっかりと管理する必要があるのは「捏ね上げ温度」です。
捏ね上げ温度とはその名の通りパン生地が捏ね上がった時の生地の温度です。
温度管理の中で一番重要なのがこの捏ね上げ温度です。捏ね上げ温度が低すぎてしまうと全然発酵が進みませんし、高すぎてしまうと発酵スピードが速くなり過ぎてコントロールが難しくなります。
また、発酵スピードが速過ぎると「ガスは溜まるので生地は膨らんでいるけど、熟成が足りないので味や香りが劣る」ということも起こってしまいます。
ですからパン生地は可能な限り適温で捏ね上げる必要があります。
ただ、これって結構難しいんですよ。なぜなら日によって気温、室温、材料の温度などが違うからです。
毎回きっちり適温でパン生地を捏ね上げるのはプロのパン職人であっても難易度が高いんです。これを何とかするための「とある方法」を後ほど説明しますね。
ちなみにパンごとに目指す捏ね上げ温度は違います。これは配合や製法がパンごとに異なるからです。
パン作りをする際はレシピに書かれている捏ね上げ温度をしっかりと確認し、それを目指すようにしましょう。
②一次発酵
仕込みが終わったら一次発酵を行いますが、一次発酵で管理すべき温度とは「生地を置いておく部屋の室温」です。
パン作りのレシピを見ると一次発酵させる温度と時間が書いてあるはずです。
基本的にパン生地はどんな生地でも28℃~30℃で一次発酵を行います。
ただ、夏場でもない限り室温が28℃~30℃になることってあまりないですよね。ですから捏ね上がった生地を室温で置いておくだけでは適切な温度管理とは言えないんです。
プロの現場だと「ホイロ」と呼ばれる発酵室があるのでそこで発酵させますが、家庭でのパン作りであればオーブンの発酵機能を使いましょう。
もし発酵機能がない場合は少し工夫が必要になります。
具体的には捏ね上がった生地の近くに沸かしたお湯を置き、生地とお湯を覆う様にビニールを被せておくといいです。
ただしこの方法だと温度を一定に保つのが難しいので、温度計を一緒に入れておいて温度をしっかりと確認する必要があります。
③二次発酵
一次発酵終了後、生地を分割・まるめし、まるめた生地が緩むのを待つのが二次発酵ですが、二次発酵で管理すべき温度とは一次発酵同様「生地を置いておく部屋の室温」です。
温度管理は先ほどの一次発酵と同様のやり方でOKです。
④最終発酵
パンの成形(伸ばしたり包んだり形を作る作業)が終わったら最後にパンを膨らませる工程が最終発酵です。
最終発酵も一次発酵、二次発酵同様発酵させる部屋の温度管理なのですが、最終発酵はパンによって適温が違います。
- 食パンやコッペパン、菓子パンなどのふわふわしっとりなパン:最終発酵は38℃の部屋
- フランスパンなどの硬めでしっかりしたパン:最終発酵は30℃の部屋
となっています。
これもレシピに書いてあるはずなので、しっかりと確認しておきましょう。
温度をきっちりと管理するための工夫を
ここまで温度管理の重要性を説明してきましたが、温度は重要ながら管理が大変なのも事実です。
ただ大変だからと言って何の工夫もせずにパン生地を置いておくだけでは美味しいパンは作れません。
ですから美味しいパンを作るためにもできるところから工夫をしていきましょう。
温度計を用意する
まずはそこまでお金をかけずにできるところから始めましょう。
パン作りをする上で「温度計」は必須の道具です。
捏ね上げ温度を正確に知るために、こういったデジタル表示の温度計は必ず用意しておきましょう。
お金に余裕があれば保温庫もおすすめ
もしお金に余裕があれば、保温庫を購入してしまうのも一つの手です。
保温庫は温度設定が出来、設定した温度に保ってくれるのでプロのパン職人が使う「ホイロ」の代用として使えます。
特にお使いのオーブンに発酵機能がない場合はこれがあると温度管理が楽になるのでおすすめです。
毎回仕込みの記録をつける
捏ね上げ温度を説明した際にお伝えした「毎回きっちり適温でパン生地を捏ね上げるための『とある方法』」を説明します。
その「とある方法」とはパン作りをする時に毎回仕込みの記録をつけることです。
具体的には
- どんな生地を仕込んだか
- 室温は何度か
- 粉の温度は何度か
- 水の温度は何度か
- 結果捏ね上げ温度は何度だったか
この5点を記録しておくことをおすすめします。
もちろんこの記録をつけたからといっていきなり捏ね上げ温度がバッチリになるわけではありませんが、データを残しておくことでパン作りをすればするほど精度が高まっていきます。
このデータを参考にしつつ、室温と粉の温度を考慮して水の温度を決めるわけですね。
ちなみに粉の温度と水の温度を記録するのは、材料の中でこの2つが捏ね上げ温度を決定する大きな要因になるからです。
このデータをとるためのフォーマットをプレゼントするので、もしよければ使ってみて下さい。
最後に
さて、長々とパン作りにおける温度のお話をしてきましたが温度の重要性は分かっていただけたでしょうか。
パン作りが上手くできない主な原因は発酵が上手にコントロールできないからだと思っています。そして発酵を上手にコントロールできないのは温度管理が上手くできないからです。
ぜひ今まで以上に温度に注意してパン作りをしてみて下さい。きっと美味しいパンが作れるようになると思いますよ!