どうも、パン職人Kenです。
あなたは「湯種(ゆだね)」って聞いたことがありますか?
一時とても流行ったパン作りの製法なので、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません(都内の某食パン専門店が流行のきっかけだったのかなと思うんですがどうなんでしょうかね…)。
この「湯種」ですが、聞いたことあるけど一体何?という方もいるでしょうし、実際に湯種を使った製法にチャレンジしたけど上手くいかなかったという方もいるかもしれません。
今回はそもそも湯種って一体何なのか、そして湯種の製法はどうなっているのかを解説していきますね!
そもそも湯種って一体何?
まず最初に湯種とは一体何なのかを説明します。
湯種とは簡単に言えば「小麦粉とお湯を合わせて練ったもの」です。
普通、小麦粉(強力粉や中力粉等)と水を合わせて捏ねるとグルテンができますよね。このグルテンの働きでパンがふわっと焼き上がります。
それでは小麦粉とお湯を合わせて捏ねるとどうなると思いますか?答えは「グルテンはできずに糊化(アルファ化)が起こる」です。
糊化(こか)もしくはアルファ化というのは、小麦粉のでんぷんが糊のような状態になることです。
この状態の生地は練ってもふわふわの生地になることはなく、粘り気や弾力のある糊状の塊になります。この塊のことを湯種と言います。
パン生地に湯種を入れるとパンはどうなる?
湯種とは一体何なのかをお分かりいただいたところで、次に「パン生地に湯種を入れるとパンはどうなるのか」を説明します。
湯種をパン生地に混ぜ込むことで、
- 糊化したでんぷん独特の甘味や風味を味わうことができる
- 糊化したでんぷんを入れることでその分グルテンの量が減り、食感がもちもちする
この2つの特徴を持ったパンを作ることが出来ます。
独特の甘みや風味がつく
「糊化したでんぷん独特の甘味や風味」と言われてもあまりピンとこないかもしれませんが、これは日本人ならおそらく誰でも味わったことのあるものなんです。
最も馴染みのある「糊化したでんぷん」とは何かというと、炊いたお米です。
炊く前の硬いお米はβでんぷんですが、炊いたお米はαでんぷん(糊化したでんぷん)になっています。
炊いたお米って甘味がありますし、いい香りがしますよね。パン生地に湯種を入れるということは、ざっくり言えば「炊いたお米の甘味や風味をパンにつける」ということなんです。
食感がもちもちする
先ほど説明しましたが小麦粉をお湯で捏ねると糊化し、グルテンはできません。
例えば湯種を使った製法で作った生地のうち、20%が湯種だったとします。
そうするとグルテンがつながった生地80%と、グルテンのない生地20%が混ざった生地になっているということになります。
パンがふわっと膨らみ、柔らかく焼き上がるのはイースト菌が作り出した炭酸ガスをグルテンがしっかりとキャッチしているからなんですが、湯種入りのパンはグルテンが少ないので膨らみづらいんですね。
膨らみづらいということは悪いことだけではなくて、もちもちした食感になるということでもあります。
こういった理由から、湯種入りのパンはもちもちした食感になります。
湯種の製法とは
湯種の製法は非常にシンプルです。
基本は強力粉とその1.5倍量の熱湯を合わせて練るだけで湯種が出来上がります。
強力粉と熱湯を合わせ、粉っぽさが無くなるまで練り続けると粘り気がありながらもプリプリとした弾力のある糊の塊が出来上がります。これが湯種です。
製法はシンプルではありますが、上手に湯種を作るためには絶対に意識しておかなければいけないポイントがあります。
そのポイントは「温度」です。
小麦粉が上手に糊化してくれるかどうかは温度次第なんです。温度が低かったり、練りあがる前に温度が下がってしまうと粉全体が十分に糊化することができず、ベチャベチャとした湯種になってしまいます。
おそらく何も意識せずにこの説明だけ読んで湯種を作るとすると
『ボウルに小麦粉を入れる→お湯を沸かしてお湯を量る→ボウルにお湯を入れて混ぜて練る』
という段取りになると思うんですが、これだと温度が下がってしまい、失敗する可能性があります(量が少なければ大丈夫かもしれません)。
そういった失敗を避けるためにおすすめなのが、「粉を煮る」状態にしてしまうことです。
水は沸かしている間に蒸発することを考えてレシピの1割増程度で計量し、お湯を沸かします。そして沸騰したらそこに計量した小麦粉を投入し、火にかけたまま練っていきます。
すぐに水分がなくなるので、粉が水分を全て吸ったら焦げ付かないように火を止め、練り続けます。
この方法でやれば小麦粉全体がしっかりと糊化した湯種を作ることが出来ますよ。
湯種が完成したら粗熱を取り、ラップでくるんで冷蔵庫で12時間ほど寝かせれば湯種の完成です。
「湯種がしっかりと糊化していない」というのは湯種パンが上手に作れないよくある原因の一つです。ぜひ今回紹介した湯種の製法を参考にしてみて下さいね!