どうも、パン職人Ken(@pansyokunin_ken)です。
今回はパン作りの工程の一つである「一次発酵」について説明をしていきます。
同じくパン作りの工程の一つである「仕込み」を説明した別記事「パン作りの基本にして工程のスタート地点|パン生地の「仕込み」とは?」では、「パンの美味しさは仕込みで8割決まる」ということをお伝えしましたが、一次発酵も仕込みに負けず劣らず超重要な工程の一つです。
この記事では一次発酵の意味や基本的なやり方、ポイントや注意点を説明していきますので、ぜひ覚えておいて欲しいと思います。
もしパン作りの工程の全体像がよく分からないという方は、別記事「上手なパン作りのための第一歩|パン作りの工程を学ぼう!」で全体的なパン作りの流れを説明しているので、そちらもぜひご覧くださいね。
目次
一次発酵とは
一次発酵とはこね上がったパン生地を発酵させ、パン特有の旨味や甘味、香りやフレーバーを引き出す工程です。
パン作りでの「発酵」というと、「パン生地を膨らませる工程」というイメージがあるかもしれませんが、一次発酵の目的はパン生地を膨らませることではありません。結果的にパン生地は膨らみますが、主な目的は別にあります。
一次発酵を行うことで、パン生地中に散らばったイースト菌は小麦粉に含まれる糖分や配合された砂糖を分解し、アミノ酸やアルコールなどの様々な物質を作り出します。
イースト菌によって作られた様々な物質はパンに旨味や甘味、香りやフレーバーを持たせ、それによりパンは美味しくなります。
また、一次発酵を行うことでイースト菌の働きが活発になり、パン生地が膨らむ力が強くなります。
このように一次発酵はパンの美味しさに直結する非常に重要な工程です。それだけに、ただパン生地を寝かせておくだけではなくてしっかりと管理してあげる必要があります。
基本的な一次発酵のやり方・ポイント
一次発酵の「やり方」といっても、特別何か手を加える訳ではありません。パン生地が上手く発酵してくれるように、パン生地にとって良い環境を整えてあげましょう。
パン生地を一次発酵させる上で「良い環境」とはどんなものかというと、「28~30℃の温度と適度な湿度」です。
一次発酵に適した温度
基本的に一次発酵は28~30℃の温度が維持できる環境で行います。
お使いのオーブンレンジに発酵機能(30℃設定)があればそれを使うのが一番簡単です。もしない場合は出来るだけ温度が30℃前後になるように工夫してやる必要があります。
簡単な方法としては、「沸かしたお湯と生地をビニール袋で上から一緒に覆う」というものがあります。お湯から出る水蒸気で加湿されるので乾燥対策にもなりますが、温度が一定にならないので温度計を見ながら調整する必要があります。
一次発酵は二次発酵と比べて低めの温度で行うのが特徴です(食パンやコッペパンなどは38℃前後で二次発酵を行う)。
なぜ温度が違うのかというと、一次発酵と二次発酵では同じ「発酵」でも目的が違うからです。
二次発酵の主な目的は「パンを膨らませること」です。ですから、イースト菌が活発にガスを作り出す温度(38℃前後)で発酵させます。
それに対し一次発酵の目的は先ほどもお伝えした通り「イースト菌にアミノ酸やアルコールなどの様々な物質を作らせ、パンに旨味や甘味、香りやフレーバーを持たせること」です。言い換えると「パン生地を熟成させる」ということです。
パン生地を熟成させるには28~30℃が適しているため、一次発酵は二次発酵よりも低めの温度で行います。
一次発酵には適度な湿度が必要
一次発酵を行う際には湿度にも気を配る必要があります。
とはいえ、湿度に関しては温度の様に「○○%を維持する」といったような細かい管理はしなくても大丈夫です。
注意する必要があるのはパン生地を乾燥させないことです。そのために適度な湿度が必要になります。
パン生地は非常に乾燥しやすく、乾燥対策をせずに置いておくとすぐに表面がカサカサになってしまいます。これはパン生地にとってあまり良い状態ではありません。
あまりにカサカサになってしまうと乾いた部分が硬く残ったり、乾いた部分にいたイースト菌が死んでしまい、焼き上がったパンの表面にブツブツと細かい気泡が出てきてしまいます(この現象を「梨肌」と呼びます)。
パン生地の乾燥を防ぐため、一次発酵中は湿度に気を配りましょう。
具体的には生地の入ったボウルに濡れ布巾を被せたり、オーブンレンジの発酵機能を使う場合は庫内に霧吹きで水を吹きかけたり、先ほど紹介した沸かしたお湯を使う方法等で加湿を行います。
一次発酵の終わりを見極める
温度と湿度に気を遣い、レシピ通りの時間一次発酵を行ったとしても「これで一次発酵は終わり」という最終的な判断は自分で確認して行う必要があります。
もちろんレシピには一次発酵の時間が書かれているはずですがこれはあくまでも目安であり、この時間通りに一次発酵を行えば常に丁度良い発酵状態になるわけではありません。
なぜなら、詳しくは後述しますが生地の温度によって発酵のスピードは大きく変わってくるからです。
とはいえ、一次発酵の進み具合は数字で表されるわけではないので、なかなか一次発酵の終わりを見極めるのは難しいですよね。
一応数字で見る方法として、底の面積が狭く高さのある容器(タッパーなど)で一次発酵を行い、「体積が〇倍になったら一次発酵終了」という様に一次発酵の終わりを見極める方法もあります。
それでも良いのですが、もっと簡単な方法として「指穴試験(フィンガーテスト)」というものがあります。
一次発酵が終了した(と思われる)生地に粉をつけた人差し指を差し込み、抜いた後の穴の状態を見て一次発酵の終わりを見極める方法です。
穴がゆっくりと閉じる状態ならば丁度良い発酵状態なのでその時点で一次発酵は終了です。
もし穴がキュッとすぐに閉じてしまうようならまだ発酵が足りません。穴が閉じずに穴の周りに気泡がブクブクと出てくる状態だと発酵させ過ぎです。
この様に指穴試験で簡単に一次発酵の終わりを見極めることができます。
一次発酵の注意点
次に一次発酵を行う際の注意点を3つ説明します。その3つとは、
- レシピ通りの条件で一次発酵させる
- 乾燥対策をしっかりと行う
- こね上げ温度によって一次発酵の時間を調節する
この3つです。
1.レシピ通りの条件で一次発酵させる
パンの種類によって一次発酵の条件は様々です。
温度はどのパンでも28~30℃ですが、一次発酵の時間やパンチの有無はパンごとに違うので、レシピをしっかり確認して書かれている通りに行う必要があります。
例えば食パンだと60分間一次発酵させてパンチをした後、再度30分間一次発酵させるレシピもあれば、パンチを入れずに60分間一次発酵させてお終いというレシピもあります。
フランスパンだと90分間一次発酵させてパンチした後、再度90分間一次発酵させるレシピが基本的ですが、同じフランスパンでもリュスティックだと60分間一次発酵させてパンチ→60分間一次発酵させてパンチ→30分間一次発酵させてパンチ→30分間一次発酵させてお終いというようなややこしいものもあります。
しっかりレシピを確認しておきましょうね。
2.乾燥対策をしっかりと行う
パン生地は非常に乾燥しやすいので乾燥対策が必須です。
乾燥対策をせずに置いておくとすぐにカサカサになってしまうので、先ほどお伝えしたような乾燥対策を行いましょう。
3.こね上げ温度によって一次発酵の時間を調節する
指穴試験のところで触れましたが、一次発酵の時間はパン生地のこね上げ温度(パン生地が仕込み終わった直後の生地温度)によって多少変わります。
パン生地の発酵スピードは温度に大きく影響を受けるため、こね上げ温度が高いと発酵スピードは速くなり、こね上げ温度が低いと発酵スピードは遅くなります。
レシピに書かれている一次発酵の時間は、パン生地のこね上げ温度が適正だった場合の時間です。ですから、こね上げ温度が適正よりも高かったり低かったりした場合は時間を調整してあげる必要があるんですね。
目安としては、「1℃のズレで一次発酵の時間は10分変わる」と言われています。目標こね上げ温度が26℃とレシピに書かれていて、実際のこね上げ温度が27℃だったら一次発酵は10分短くするということです。反対に25℃だったら10分長くするということですね。
ただしこれはあくまでも目安なので、一次発酵の終わりは指穴試験を行って見極めましょう。
まとめ
今回はパン作りの工程の一つである「一次発酵」のやり方やポイント、注意点について説明してきましたがいかがだったでしょうか。
まとめると、
- 一次発酵はパンの味や香り(=美味しさ)に大きく関わる重要な工程
- 一次発酵は28~30℃を維持できる環境で行う
- お使いのオーブンレンジに発酵機能があればそれを使い、なければ沸かしたお湯とパン生地をビニール袋で覆うなどして出来るだけ28~30℃を保てるように工夫する
- 一次発酵中はパン生地が乾燥しないように加湿する
- 一次発酵の終了は指穴試験を行って見極める
- パンごとに一次発酵の条件は違うのでレシピをしっかりと確認する
- レシピに書かれた一次発酵の時間はあくまでも目安であり、こね上げ温度次第で適正な発酵時間は前後する
このようになります。
一次発酵はパンの美味しさに直結する重要な工程なので、今回の内容を参考にしてしっかりとパン生地の発酵状態を管理してあげて下さい。
上手に一次発酵させた生地で作るパンは間違いなく美味しくなりますよ!
【参考記事】一つ前の工程(仕込み):「パン作りの基本にして工程のスタート地点|パン生地の「仕込み」とは?」
【参考記事】次の工程(パンチ):「ガス抜き&発酵促進!|ふわふわのパン作りに必要な工程「パンチ」とは」
【参考記事】パン作り工程の全体像:「上手なパン作りのための第一歩|パン作りの工程を学ぼう!」
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