ガス抜き&発酵促進!|ふわふわのパン作りに必要な工程「パンチ」とは

どうも、パン職人Ken(@pansyokunin_ken)です。

今回はパン作りの基本の工程の一つである「パンチ」について説明していきます。

この「パンチ」ですが、やる作業自体はとても簡単です。

ですが、パンの種類によってやったりやらなかったり、同じパンでも他の条件によってやったりやらなかったりと、ちょっと分かりづらい工程かもしれませんね。

その辺りは「なぜパンチをするのか」を理解すると分かると思いますので、基本的なパンチのやり方に加えてパンチをする意味や注意点を説明していきますね。

ちなみにパンチは一次発酵の途中で行う工程です。一次発酵については別記事「上手な一次発酵が美味しいパンの決め手!|一次発酵の意味や注意点」で解説していますので、そちらもぜひご覧ください。

基本の工程の一つ「パンチ」とは

パンチとは一次発酵の途中でパン生地のガスを抜き、折りたたむ作業のことです。

この工程を行うことで、

  1. パン生地を折りたたむことで生地に力がつきボリュームが出やすくなる
  2. パン生地中のガスを抜くことで気泡が均一になりきめ細かい生地になる
  3. パン生地中のガスを抜き、代わりに新しい空気を取り入れることで発酵が促進される

このような効果を得ることが出来ます。

パンチをした生地は力を加えたことでプリップリになるため、すぐ次の工程に移ることは出来ません。

ですから「一次発酵→パンチ→再度一次発酵」という様に、一次発酵の間に挟まるような形でパンチの工程が入ります。

パンチのやり方

パンチのやり方は非常に簡単で、先ほども説明したように一次発酵途中でパン生地を取り出し、ガス抜きをして折りたためばOKです。

まずは生地のガスを抜きます。手のひらを使って軽く生地を押さえ、全体的に大きなガスを抜いていきます。

大きなガスが抜ければいいので、強く押しつぶさないように注意しましょう。あまりに強く押しつぶしてしまうと生地が傷んでしまいます。

ガスを抜いた生地をきれいな四角形になるように整え、1/3の所で折りたたみます。

反対側からも折りたたみます。生地が3段になっている状態ですね。

これを再び1/3の所で折りたたみます。画像は生地を90°回転させています。

更に反対側からも折りたたんだらパンチ終了です。3段重ねを更に3段重ねにしているので、生地が9段重ねになっている状態ですね。これが基本のパンチのやり方です。

パンチをする生地・しない生地の違い

記事冒頭で「パンチはパンの種類によってやったりやらなかったり、同じパンでも他の条件によってやったりやらなかったりと、ちょっと分かりづらい工程かもしれない」ということをお伝えしました。

ではなぜそういった違いが出てくるのでしょうか?それに対する答えとして、パンチをする生地としない生地の違いについて説明します。

おさらいですが、パンチをする3つの目的は「パン生地に力をつける」、「生地のきめを細かくそろえる」、「発酵を促進させる」というものでしたね。

どれもパン生地にとってはプラスに働く作用なので、どのパンでも「パンチをしてはいけない」ということはありません。

ただ、パンチをすることで生地がプリップリになるため、パンチ後に再び一次発酵を行う(生地が緩むのを待つ)必要が出てきます。

そうすると、パンチをしない場合と比べて一次発酵にかかる時間は長くなります。一次発酵にかかる時間が長くなれば、当然パンが焼き上がるまでにかかる時間も長くなります。

もしパンチをしなくてもパン生地に力がつき、生地のきめが細かくなり、発酵力が十分にあるならパンチをしない方がパン作りにかかる時間は短くなります。

短い時間で美味しいパンが作れるならそちらの方が良いですよね。

なのでパンチをしなくてもボリュームが出て美味しいパンが作れるのであれば、あえてパンチをする必要は無いわけです。

つまりパンチをするパン生地というのは、パンチをしないとボリュームが出ず、美味しく焼けないパン。パンチをしないパン生地というのは、「あえてパンチをする必要の無いパン生地」ということなんです。

パンチをする必要のあるパン生地

パンチをする必要があるパン生地とは、先ほど説明した通りパンチをしないとボリュームがあまり出ず、美味しく焼けないパンです。

具体的にいくつか例を挙げると、

  • フランスパン
  • 手でこねたパン
  • 油脂や水の配合量が多いパン

こういったパン生地です。

これらに共通していることは「比較的グルテンが少ない、もしくは出来にくいパン生地」ということです。

フランスパンは準強力粉(中力粉)を使って作るため、強力粉で作るパン(食パンやコッペパンなど)の生地と比べてグルテンの量が少なくボリュームが控えめになります。

手でこねたパンの場合、どうしても「こね」が足りなくなりがちです。たとえ強力粉を使ったパンだとしても、手ごねだと出来上がるグルテンの量が不十分で、その結果ボリュームが不足しがちです。

水の配合量が多いパンはグルテンが出来上がるのに時間がかかり、こねてもこねてもなかなか生地がまとまりません。

また、油脂にはグルテンのつながりを阻害する働きがあるため、油脂をたくさん配合する菓子パンのような生地の場合はかなりしっかりこねないと十分なグルテンが作られず、その結果ボリュームが不足しがちです。

こういった理由によるボリューム不足の対策として、パンチをしておくと安心できます。

パンチをする必要がないパン生地

パンチをする必要がないパン生地は、パンチをしなくてもしっかりボリュームが出るためあえてパンチをする必要がないパンだということを先ほど説明しましたね。

具体的にどういうパン生地かというと「強力粉を使い、機械を使ってこねることで十分なグルテンが出来たパン生地」です。

強力粉はたんぱく質含量が中力粉や薄力粉と比べて多いのですが、たんぱく質含量が多いほどしっかりこねた時にできるグルテン量が多くなります。

つまり、強力粉で作るパンはしっかりこねることさえできればパンチをしなくても十分なボリュームを出すことができるということなんですね。

ただしこの「しっかりこねる」というのが難しいところで、手ごねだとどうしてもこねが足りなくなります。

ではどうすれば「しっかりこねる」ことが出来るかというと、機械の力を借りればいいんですね。

生地をこねる機械はホームベーカリー、スタンドミキサー、ニーダーなどがありますが、こういった機械で生地をこねると手ごねとは比べ物にならないくらいしっかりとグルテンを作ることが出来ます。

こういった事から、強力粉を使い、機械を使ってこねることで十分なグルテンが出来たパン生地ならばしっかりとボリュームが出るのでパンチは不要になります。

パンチをする際の注意点

パンチをする際の注意点は5点あります。それは、

  1. 生地がくっつかないように適度に手粉(打ち粉)を使う
  2. 生地を取り出す際に生地が重ならないようにする
  3. ガス抜き時に生地を傷めないようにする
  4. 生地を折りたたむ時はきっちりと生地を重ねる
  5. 生地に力をつけたい時は生地を引っ張りながら折りたたむ

この5点です。

1.適度に手粉(打ち粉)を使う

パンチは一次発酵の途中で生地を容器から取り出して行うことになります。その際は手粉(打ち粉)を使い、作業台に生地がくっつかないように注意しましょう。

生地が作業台にくっついてしまうと単にパンチがやりにくいだけでなく、生地が傷みやすくなってしまいます。

水の量が多い柔らかい生地は非常にくっつきやすいので特に注意が必要です。

2.生地が重ならないようにする

生地を容器から取り出すときに、生地が重ならないように注意しながら作業台に生地を取り出しましょう。

生地が重なってしまうとその部分だけ既にパンチをしたような状態になってしまい、生地状態が均一になりません。

生地を取り出すときは作業台の上で容器をくるっとひっくり返し、カードで生地をはがしながら注意して取り出すと重ならずに取り出すことが出来ます。

3.ガス抜き時に生地を傷めないようにする

パンチはガスを抜いて折りたたむ作業ですが、ガスを抜く際には生地を傷めないように注意しましょう。

「パンチのやり方」の所でも説明しましたが、ガス抜きをする時は手のひらを使って優しく生地を押さえ、大きなガスを抜いていきます。

この時に生地がペラッペラになるまで薄く伸ばす必要は無く、大きなガスが抜けて均一な厚さになっていればOKです。

バンバンと叩くようにガスを抜いてしまうと生地が傷んでしまうので注意が必要です。

4.きっちりと生地を重ねる

生地のガスを抜いたら生地を折りたたんで重ねていきますが、重なっていない部分が無いようにきっちりと生地を重ねましょう。

生地の中で重なっている部分と重なっていない部分があると生地の強さにばらつきが出てしまい、生地状態が均一になりません。

5.生地に力をつけたい時は生地を引っ張りながら折りたたむ

パンの種類によっては、パンチでしっかりと生地に力をつけたい場合があります。

生地に力をつけたいと思った時に、強く叩いてガス抜きをしてしまいがちですが、そうではなくて生地を引っ張りながら折りたたむようにしましょう。

生地を強く叩いてしまうと先ほど説明した通り生地を傷めてしまう可能性があります。

ガスを抜いた後にただ生地を折りたたむのではなく、一度生地を軽く引っ張ってから折りたたむと引っ張られた部分の生地が張り、生地に力をつけることが出来ます。

まとめ

今回はパン作りの工程の一つである「パンチ」について説明してきましたがいかがだったでしょうか。

おさらいをすると、まずパンチの目的は

  1. パン生地を折りたたむことで生地に力をつけボリュームを出す
  2. パン生地中のガスを抜くことで気泡を均一にし、きめ細かい生地にする
  3. パン生地中のガスを抜き、代わりに新しい空気を取り入れることで発酵を促進させる

この3つでしたね。

パンチのやり方は生地にたまったガスを軽く抜き、折りたたむという簡単な作業でした。作業自体は簡単ですが、注意点が5つあって

  1. 生地がくっつかないように適度に手粉(打ち粉)を使う
  2. 生地を取り出す際に生地が重ならないようにする
  3. ガス抜き時に生地を傷めないようにする
  4. 生地を折りたたむ時はきっちりと生地を重ねる
  5. 生地に力をつけたい時は生地を引っ張りながら折りたたむ

この5点に注意しながらパンチをするようにしましょう。

実際にパンを作る時にパンチをするかどうかはレシピに従って判断すればOKですが、考え方としては

  • フランスパン・手でこねたパン・油脂や水の配合量が多いパンの生地は比較的グルテンが少ない、もしくはできにくいのでパンチをしておいた方が良い
  • 強力粉を使い、機械を使ってこねることで十分なグルテンが出来たパン生地はパンチをしなくてもボリュームが出るのでパンチは不要

この様に考えておけばいいかなと思います。

パンチはとても簡単であっという間に終わってしまう作業ですが、大切な工程の一つです。

もしパンチが必要なパンを作る場合は、ぜひ参考にしてみて下さいね!

【参考記事】一つ前の工程(一次発酵):「上手な一次発酵が美味しいパンの決め手!|一次発酵の基本的なやり方と注意点
【参考記事】次の工程(分割・まるめ):「きれいな成形の前準備|生地のグラムをそろえる「分割」と「まるめ」とは
【参考記事】パン作り工程の全体像:「上手なパン作りのための第一歩|パン作りの工程を学ぼう!

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